2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

聖徳太子「和を以て貴しとなす。忤うなきを宗となす」

聖徳太子「和を以て貴しとなす。忤うなきを宗となす」 【震災の混乱の中で、誰言うこともなく、天の啓示 のように現れた「絆」という言葉は、この「以和 為貴」と同義であろう。ありがたいことに、聖徳 太子が、日本人に初めて授けた法は、その言葉を 忘れて…

文庫化の間にいまわしき東日本大震災と原発事故が起こった

文庫化の間にいまわしき東日本大震災と原発事故が起こった 【感情に流されず,怖れまどわず、これまで通りにそ れぞれの職分を尽くすことこそが、今の私たちの正 しい心構えではあるまいか。たとえば、私は小説家 なのだから黙って小説を書き続けなければな…

私の生家には、東京の旧いならわしが残っていた

私の生家には、東京の旧いならわしが残っていた 【たとえば朝晩の食事の折など、二間続きの座敷の上 座に父と祖父と兄が座り、そこから両側に住み込み の店員さんたちが居流れて次男坊の私は末席であっ た。いわゆる「冷や飯食い」である。祖母と母は使 用人…

なかなか夢が実現できずに、とうとう笑顔が地顔になった

なかなか夢が実現できずに、とうとう笑顔が地顔になった 【幸せを求めるうえにも苦悩から免れるためにも、笑 顔は不可欠な要件である。楽しければ笑い、苦しけ ればももっと笑い、どちらでもなければ自然に笑っ ていればいい。日がな花のように笑い続けて、…

文学が立派な教養とみなさるのは社会の中でごく一部

文学が立派な教養とみなさるのは社会の中でごく一部 【わかりやすく言うなら自衛隊の兵舎の中で文学な ど語ろうものなら、まず周囲から白眼視され、へ たをすれば袋叩きの目にあった。軍隊以上にマニ ッシュな婦人服業界でもそれは同様であった。ほ かにも私…

小説家たる最大の資格はまず嘘つきであることで、

小説家たる最大の資格はまず嘘つきであることで、 【少なくとも、そういう私に、座右の銘などある はずないのである。しかし、嘘を生業(なりわ い)とするのだから、哲人ぶるのも芸のうちで、 色紙など差し出されると、いかにも、それらし い言葉を書く。実…

多才な人間ほど一芸を物にすることができない、ハンディだ

多才な人間ほど一芸を物にすることができない、ハンディだ 【あれもこれもやろうとしてはいけない。できる と思っても、やってはならない。神様はマルチ タレントなどという便利な人間を、この世に、 ひとりも造ってはいない。仮に、あれもこれも やったとろ…

選択肢が多すぎて一途な人生を発見できぬのは、不幸。

選択肢が多すぎて一途な人生を発見できぬのは、不幸。 【才能を発揮するべき職業を選んでいるうちに、才 能を発揮するべき時間が、失われてしまう。磨き もせぬのに、輝く才能などは、ありえないから、 大切な時間を空費してしまえば、はなからないに 等しい…

ほんの子供のころから、小説家になろうと思った

ほんの子供のころから、小説家になろうと思った 【思い返せばまことに痛ましいほどの、一途な少年 であり、青年であった。そもそもそうまで一途に なるほどの才能もなく、環境にも恵まれていなか ったから、悲願を達成するまでには当然時間を要 した。恋人と…

先人が遺した美しい歌を葬り去るほど人間は進歩していない

先人が遺した美しい歌を葬り去るほど人間は進歩していない 【日本の近代教育における伝統的な卒業式の手順による と、まず。卒業生がこぞって「仰げば尊し」を唄って 学恩を謝したのち、全校生徒の「蛍の光」の合唱で送 り出される。少なくとも、私たちの世…

蛍を知らないのに「蛍光灯」の下で成長したのは妙な話

蛍を知らないのに「蛍光灯」の下で成長したのは妙な話 【その新しい光がわが家に灯った夜のことは、これも また、はっきりと覚えている。六つか七つのころで あったろうか、近所の電器屋が蛍光灯なる新しい文 明をわが家に設置したのである。点灯したとたん…

大人になるまで蛍を見たことがなかった

大人になるまで蛍を見たことがなかった 【ことに高度成長期の申し子である私たち世代は自然 の風物とは無縁だった。「便利さ」と「豊かさ」が 同じ意味だと教えられ、かつ信じていた子供らにと って蛍は物語の中にしかありえなかった。その蛍と の初めての出…

盛年重ねて来たらず、一日ふたたび晨なりがたし

盛年重ねて来たらず、一日ふたたび晨なりがたし 【時の悪魔に抗う唯一の方法は、「自楽」のほかに あるまい。仕事も勉強も結構だが快楽や幸福感を 犠牲にしてしまえば時間は矢のように過ぎてしま う。今から一五七九年前に死んだ大詩人は、その 雑詩の聯をこ…

この連載もめでたく二周年を迎えたらしい

この連載もめでたく二周年を迎えたらしい 【それにしても、なにゆえ歳月の感覚というのも のは人生においてかくも不均等なのであろうか。 たとえば最近の三年間が、中学校の三年や高校 の三年と同じであるとは、どうしても思えぬ。 たぶんこの世に見えざる時…

休むというより幸福を確認する時間を持たなければ

休むというより幸福を確認する時間を持たなければ、 【フランスでは夏休みをとっていない社員の存在が 判明すると、管理責任者は役所に呼びだされるら しい。どのよううな事情があろうと、その翌日か ら、最低二週間は当人の出社が禁じられている。 お上(か…

労働を美徳とし休みを罪悪と決めつける潜在的な感情

労働を美徳とし休みを罪悪と決めつける潜在的な感情 【誰もが同僚たちの顔色を窺いながらこっそりと 休暇の計画を練り、まるで借金でもするみたい に、まさか借用証ではない休暇届を提出する。 受理をした上司も、当然の権利であるから否定 こそせぬものの、…

この夏もまた、休みらしい休みをとらずに過ぎてしまった

この夏もまた、休みらしい休みをとらずに過ぎてしまった 【多くの読者は、小説家という職業はいわゆる自由 業の典型と考えているにちがいない。しかし正し くは、小説家が自由であるのは生活が不自由なこ ろだけで、人並みに飯が食えるようになったとた んか…

ともかく私たちの社会は伝統的に「付き合い」が多すぎる

ともかく私たちの社会は伝統的に「付き合い」が多すぎる 【もともと、私の早寝早起きは、生家の習慣であった。 江戸前の祖父母が家を支配していたので、夜明けと ともに叩き起こされたのである。さらにその生家が 没落してからは早朝のアルバイトに精を出さ…