2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

自衛隊出身のパーワーが我ながらソラ怖ろしい

自衛隊出身のパーワーが我ながらソラ怖ろしい 【私がどういう生活をしているかというと、ホ ット・カーペットの上で毛布にくるまり、座 椅子で寝起きしている。昼夜を分かたず、力 尽きればリクライニングを倒して眠り、三十 分ないし二時間後には再びムック…

仕事を抱えすぎて書斎が戦場のような有様になってしまった

仕事を抱えすぎて書斎が戦場のような有様になってしまった 【作家として最も力が入るものは書き下ろしの小 説で、実はこちらも急を要するものだけで数本 も抱え込んでしまっている。まずいことに、私 は徒手空拳で原稿は書けない。実際にペンを執 っている時…

日本橋のさる大書店で直木賞受賞記念のサイン会を催した

日本橋のさる大書店で直木賞受賞記念のサイン会を催した 【受賞作『鉄道員(ぽっぽや)』も順調に版を重ね、サイ ン会はことのほか盛況であった。読者の行列もようや く終わりに近付いたころ、私の目の前に一枚の名刺を はさんだ『鉄道員』が差し出された。名…

十代から二十代の初めにかけて私にはKという親友がいた

十代から二十代の初めにかけて私にはKという親友がいた 【Kからバクチを奪えば、人間として存在する意味 は何もなかった。Kはけっして頭が良いというタ イプではない。日ごろの生活はむしろ愚鈍であっ た。教養のかけらもなく、スポーツ新聞以外の活 字を…

漢学者は「博奕」を「はくえき」または「ばくえき」と読み習わす

漢学者は「博奕」を「はくえき」または「ばくえき」と読み習わす 【「博」という字は、「ひろい」「ひろめる」「ゆき わたる」「おおきい」「おおい」「とおい」という ような結構な意味を持っている。また「奕」という 字も、もともとは人間が両手を広げて…

飲む、打つ、買う、という男子の三大道楽のうち……

飲む、打つ、買う、という男子の三大道楽のうち…… 【私は生来のバクチ好きで、勝ち負けはともかく、 どれくらいの貴重な時間を競馬場や麻雀屋で空費 したかわからない。少なくとも十年は出世を遅ら せたにちがいない、と思う。実は若い時分から、 そんなこと…

バブルの荒波が押し寄せ、あろうことか父は伊豆に引越した

バブルの荒波が押し寄せ、あろうことか父は伊豆に引越した 【私はその後、千歳烏丸から稲城へと越し、去年の 秋に日野へと移った。多摩川ぞいの、ギリギリ東 京都民として踏みとどまっている。京王線も次の 特急停車駅は、終点八王子であるから、もう後が な…

私は先天性の都市生活者、ビルの谷間を二十回も引越した

私は先天性の都市生活者、ビルの谷間を二十回も引越した 【よんどころない事情で東京を去ることを、 「江戸を売る」と言う。わかりやすく言うと 「都落ち」である。江戸っ子にとって生まれ た故郷を去ることは、何か不始末をしでか して居場所がなくなるとい…

「私から小説を奪ったら、骨のかけらも残りません。」

「私から小説を奪ったら、骨のかけらも残りません。」 【三十五で初めて原稿料なるものをちょうだ いし、四十に手の届く齢になってようやく 単行本が出た。何冊かの小説を世に出した あとで、直木賞をいただいたとき、授賞式 の壇上で、思わず本音を漏らして…

小説家に「なりたい」のではなく、「なる」と決めつていた

小説家に「なりたい」のではなく、「なる」と決めつていた 【ただし偉そうなことを考えていたわりに、デビ ューまで長い年月を要した。最初の十年は意地、 次に十年は執念、続く数年は身も心も削るよう にしてようやく小説で飯が食えるようになった】 浅田次…