エドガー・アラン・ポー『黒猫』(集英社文庫)(3)

エドガー・アラン・ポー『黒猫』(集英社文庫)(3)

{怖いのはたぶん壁の下の死体ではなく、今か
 ら自分が壁の中に何かを埋めること。それを
 やってしまうかもしれない、ということの方
 だと、最初に気づいたのはいつだったろうか}
『ネオカル日和』〈著者〉辻村 深月(11)
《2 おおむね本と映画の宝箱》から ◇骨に埋められた『黒猫』

『黒猫』の主人公と自分とが、そう遠い存在ではない

◆◇◆続々・立ち読み失礼◆◇◆

☆佐高 信『原発文化人50人斬り』毎日新聞社☆(55)

▼△第3章 東京電力の歴史と傲慢△▼ (21)
東電の変質と傲慢(上)

橋本清之助「原子力関係者は社会とファウスト的契約を結んだ」

佐藤栄佐久 (著) 『福島原発の真実 』(平凡社新書) ☆(44)

▼△第7章 大停電が来る(14)△▼
・情報公開どこまで(その3)

保安院の隠蔽は、警察や検察が証拠を改竄、隠蔽するようなもの

『ネオカル日和』〈著者〉辻村 深月(11)
《2 おおむね本と映画の宝箱》から ◇骨に埋められた『黒猫』

『黒猫』の主人公と自分とが、そう遠い存在ではない

《「 ・黒猫 (集英社文庫) 黒猫 (集英社文庫) ・《青空文庫エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 黒猫 THE BLACK CAT それから一年ほどして、私のうちは、敷地内 の庭に家を新築することになった。地面に線 が引かれ、コンクリートが流し込まれて土台 が作られ、機械が木を積み上げていく。 作業が進む中、私は両親が呆れるほどの熱心 さでそれらの作業を見守ることに没頭した。 柱と柱の間、この位置に壁ができるという場 所に立ち、自分の体を間にに擦りこませる。 壁になる部分の厚みは、子供の私よりほんの 厚いくらい。今考えれば、成人の死体が入る 厚さではないのか、と落胆してもよさそうな ものだが、当時の私には逆に思えた。 この程度の厚さしかないのに、それでも人や 猫を呑み込むのだから、本当に「壁」という ものは、築かれたその瞬間に宇宙とつながる のだ、考えを飛躍させ、畏怖の念をさらに広 げていった。 怖いのはたぶん壁の下の死体ではなく、今か ら自分が壁の中に何かを埋めること。それを やってしまうかもしれない、ということの方 だと、最初に気づいたのはいつだったろうか。 利己的な『黒猫』の主人公と自分とが、必ず しもそう遠い存在ではないと感じたのは。 壁を見つめる私は、ひょっとして、いつか自 分が何らかの感情を封じ込めるのに使う壁を 探し、それらを見定めていたのではないだろ うか。 それは、家のものよりは学校や病院の冷たい コンクリートが近く、自分がその前に「何か」 を抱えて立つ将来を思い描くと、息が詰まる ような、その一瞬後で、体じゅうから力が抜 けて楽になるような、不思議な感慨に襲われ たことを、もう否定できないほど覚えてしま っている。 」》 (つづく) (Y196-81) ・エドガー・アラン・ポー肖像 ◇「ホイットマンダゲレオタイプ」と呼ばれるもの。 1848年11月に撮影。ホイットマン夫人に与えるために 撮影したもので、夫人が所持していた。 ◆Wikipedia:エドガー・アラン・ポー
The Black Cat(漫画)
(sphereballs さんが 2009/12/17 にアップロード) 【An adaptation of "The Black Cat" by Edgar Allan Poe.  Everything by Chris Turnbull and Damian Tasker.】
Edgar Allan Poe - The Black Cat
(SpidersHouseAudio さんが 2009/06/03 にアップロード) 【'The Black Cat' by Edgar Allan Poe -Read by Roy Macready - Running time of complete story 29 minutes.】 ◎辻村深月さんの、この壁へのかかわりは不 思議な体験ですね。 人間の幼年体験というのは、その人の一生を 左右するようです。先に書いた私の高所恐怖 症について、どうして、そうなったのか、い ろいろ考えてみましたら、素人判断ながら、 思い当たることが一つありました。 最初に、女の子が二階の出窓から、手を振っ て何か叫んでいて、と、いう光景が先ずあっ て、一瞬、その画が断絶して、いきなり女の 子が落ちてきたんです。 その前後のことは一切はっきりしません。ま た、それは、何時なのか、何処なのか、も分 からないのです。もしかしたら、それは夢な のかもしれない。女の子が落ちた個所以外は ぼやっとしているのです。ただ、私が声を掛 けために、女の子は落ちたという意識だけが、 心の中に淀んでいるのです。 初めて、私は、私の心の中の壁をこじ開けて みました。
エドガー・アラン・ポー原作「世にも怪奇な物語フェリーニ(予告編)
(ponpokoteiou さんが 2010/10/31 にアップロード) 【エドガー・アラン・ポーの原作を三部作として、仏伊三人の 監督がそれぞれの個性とスタイル生かして作ったオムニバス。 第一部「黒馬の哭く館」は、ロジェ・ヴァディム、パス-カル ・カズン、ダニエル・ブーランジェの三人が脚色、「バーバ レラ」のロジェ・ヴァディムが監督。撮影はコンビのクロー ド・ルノワール、音楽はジャン・プロドロミデスが担当。出 演は「バーバレラ」のジェーン・フォンダと彼女の弟のピー ター・フォンダ。 第二部「影を殺した男」はルイ・マル、クレマン・ビドル・ ウッド、ダニエル・ブーランジェ-が脚色、「パリの大泥棒」 のルイ・マルが監督。撮影はトニーノ・デリ・コリ、音楽は ディエゴ・マッソン。出演は「太陽が知っている」のアラン ・ドロン、「今宵バルドーと共に」のブリジット・バルドー。 第三部「悪魔の首飾り」はフェデリコ・フェリーニ、ベルナ ルディーノ・ザッポーニが脚色、「81/2」のフェデリコ・フ ェリーニが監督。撮-影は「異邦人」のジュゼッペ・ロトゥン ノ、音楽は、「ロミオとジュリエット(1968)」のニーノ・ロ ータ。出演は「血と怒りの河」のテレンス・スタンプ、サル ヴォ・ラン-ドーネ】

『ネオカル日和』

単行本: 280ページ 出版社: 毎日新聞社 (2011/11/25) 《待望の初エッセイ集! 大好きがいっぱい! 【ネオカルチャー】辻村深月が独断と偏愛で選ぶ日本の 〈今〉を象徴する、おもしろいもの、かわいいもの、お  いしいもの、ヘンなもの、そんなものぜんぶ。  国民的マンガからパワースポットまで、“ネオカル”  の現場を人気ミステリー作家が潜入!辻村深月のマニ  アックなこだわりとキュートでトホホな日常を綴る初  ルポ&エッセイ集》〔表紙帯から〕 〔目次〕 1 ネオカルチャー新発見  (支えは藤子・F・不二雄さんの人格 ドラえもん  レッツ・のう能!のうのう能 ほか)
2 おおむね本と映画の宝箱
 (私をまっすぐ映すものオマージュのための ショートストーリー&エッセイ ほか) 3 四次元の世界へ  (あしたも、ともだち世界で一番好きなラブ ストーリー『パーマン』 ほか) 4 特別収録 ショートショート&短編小説  (彼女のいた場所写真選び ほか) 5 女子とトホホと、そんな日々  (a day in my life 私をハイにする…― ウッカリショッピング ほか) 〔著者〕 ☆辻村 深月(つじむら・みづき)☆ 一九八〇年ニ月ニ十九日生まれ。山梨県出身。千葉大学 教育学部卒業。二〇〇四年に『冷たい校舎の時は止まる』 で第三十一回メフィスト賞を受賞しデビュー。二〇一一 年『ツナグ』で第三十ニ回吉川英治文学新人賞受賞。他 の著作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』 『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』 『名前探しの放課後』『ロードムービー』『ゼロ、ハチ、 ゼロ、ナナ。』(第一四ニ回直木賞候補作)『V.T.R.』 『光待つ場所へ』(以上、講談社)、『ふちなしのかが み』『本日は大安なり』(以上、角川書店)、『オーダ ーメイド殺人クラブ』(集英社)『太陽の坐る場所』 『水底フェスタ』(以上、文藝春秋)など多数。新作の 度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者 からの熱い支持を得ています。

『ネオカル日和』〈著者〉辻村 深月(11)

◆◇◆続々・立ち読み失礼◆◇◆

☆佐高 信『原発文化人50人斬り』毎日新聞社☆(55)

原発安全神話を捏造してきたのは誰か!   政財界、メディアと御用学者とタレント文化人  ――原発翼賛体制のすべてを暴き、フクシマの  惨事を招いた者たちを、怒りをこめて告発する》  (表紙帯から)
▼△第3章 東京電力の歴史と傲慢△▼ (21)
東電の変質と傲慢(上)

橋本清之助「原子力関係者は社会とファウスト的契約を結んだ」

《「――木川田のパートナーともいうべき日本原子力産業会議の代表 常任理事だった橋本清之助は、「ニ〇世紀の初頭に人類が手中にした 三つの文明を、私は、これまで、輝かしい科学技術だと信じていたが、 もしかしたら、人類を破滅に追い込む、悪魔の申し子ではないかと思 える」と側近に漏らしたりした。 Wikipedia:橋本清之助 橋本のいう“三つの文明”とは、自動車、飛行機、そして原子力のこ とだが、原子力開発を推進する立場にありながら、橋本は一九七三年 春の原子力産業会議の年次大会で、 「私たちが、原子力の開発に確信が持てるのは、それは現在、原子力 に対する強い反対と批判が存在するためです。あるいは、奇異に受け 取られるかもしれませんが、この原子力に向けられている批判、避難、 反対こそが、私達の努力の、いわば道標になっているといえます」 と発言した。 そして、しばしば、「ファウスト的契約」という言葉を口にしたので ある。 「われわれ原子力関係者は社会とファウスト的契約を結んだ。すなわ ち、われわれは社会に原子力という豊富なエネルギー源を与え、それ と引きかえに、これが制御されないときに、恐れべき災害を招くとい う潜在的副作用を与えた」と。 「ファウスト的契約」とは、いうまでもなく、ゲーテの「ファウスト」 の主人公が、悪魔のメフィストフェレスに魂を売ることを比喩してい るわけだが、それが現実のものとなってしまった。 女性スキャンダルで早々に首相を退いた宇野宗佑が勲章をもらった時、 経団連会長だった平岩外四が、同じ勲一等でも、ランクが下のをもら った。 平岩とは何度か会い、比較的良識をもった経営者だと思っていたのだ が、その時私は、かなり激しい調子で、『週刊東洋経済』のにコラム に、「宇野より下位の勲章をもらって嬉しいか」と書いた。師の木川 田も断ったのにと悲しかったからである。 するとまもなく、城山三郎を通じて、会いたいという連絡が来た。 ――》 原発文化人50人斬り ◎行きつく先に落とし穴がパクリと口を開けて待ち構えているいる事 を知っていながら、突き進んでしまうのが、人間なのか。破滅をわか っていても、メフィストフェレスに魂を売ることも、あえてやってし まう。余談ながら、レミングというネズミをご存知ですか。北極近辺 に住むかわいいネズミで、古くから集団で崖から海に飛び込み、集団 自殺する不思議な動物として知られています。レミングを嗤えますか。
Lemming Migration Along the Norwegian Coast (Britannica.com)
(BritannicaOnline さんが 2007/02/16 にアップロード) 【If all of your friends jumped off the Brooklyn Bridge,  would you? If you happen to be a lemming, unfortunately,  the answer is a resounding "YES."】 ///////////////////////////////////////////////////////////
◆◇◆立ち読みのはしご◆◇◆

佐藤栄佐久 (著) 『福島原発の真実 』(平凡社新書) ☆(44)

《国が操る「原発全体主義政策」の病根を知り尽くした  前知事がそのすべてを告発》(表紙帯から)
▼△第7章 大停電が来る(14)△▼
・情報公開どこまで(その3)

保安院の隠蔽は、警察や検察が証拠を改竄、隠蔽するようなもの

《「――それを打破するために作られた仕組みが内部告発制度だった。 実際の告発が原子力安全・保安院に対して行われたが、保安院は二年 にわたってそれを握りつぶしていた。 内部告発がもたらされたころ、アメリカでは、証券監視委員会のニ〇 年越しの活動で、企業が法を犯している際に従業員がそれを内部告発 することを公共の利益として保護し、企業もそれに対応しなければ証 券監視委員会(SEC)からペナルティを受け、あるいは退場という 仕組みが整備された。 しかし、内部告発を受ける保安院に、そのような仕組みとマインドの 理解がまったくなかったのである。だから隠蔽に走った。警察や検察 が証拠を改竄したり隠するようなものである。 このような体質が変わらなければ、原子力の安全が実現されることも ないし、国民の「安心」もあり得ない。私が福島県で二度にわたって 核燃料サイクル原子力政の勉強会を開いたのも、「知ったうえで適 切な判断を下せるように」、 そして、 「県の原子力政策を透明化し、県民にも透明に、場合によってはプロ セスに参加してもらえるようにして安心してもらうこと」が大切だと いうことを認識してもらいたいからだ。 ところが、また福島県民は裏切れることになる。――》 福島原発の真実 (平凡社新書) ◎振り返ってみれば、そもそも「原子力安全・保安院」は詐欺的な名 称でした。本来、資源エネルギー庁の特別の機関で、原子力その他の エネルギーに係る安全及び産業保安の確保を図るための機関である筈 なのに、2011年3月に起こった東京電力福島第一原子力発電所の事故 を防ぐことができず、またその後の事故処理は最悪でした。 さすがに、政府も重い腰を上げ、2012年3月をもって「原子力安全・ 保安院」の廃止を決め、あらたに4月から環境省の外局で新組織「原 子力規制庁」を設置する。今度こそ、その名に恥じない役目を果たし もらいたい。 

≪都会歳時記≫

[都市・現代の視座1000句]句集 古家 元「文學の森」刊]
〔春〕植物  梅一輪東京地方といふ予報
http://shop.bungak.com/products/detail.php?product_id=143

≫平成万葉集

読売新聞社 (編集)、「万葉のこころを未来へ」推進委員会 (編集)
十五夜といわれて気付く明るさに秋明菊の茎の細さやも
前田幸子(75歳)埼玉県

◆◇◆悪魔の辞典より◆◇◆

アンブローズ ビアス (著)、Ambrose Bierce (原著)、 西川 正身 (翻訳)
好み(preference n.)
一つのものが他の一つのものより優っているとい う、誤った信念から生じる感情、もしくは気分。 新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)

☆★☆言えそうで言えない英会話表現☆★☆

彼はまさに私が思っていたとおりの人ね。
He's jusut the kind of person I imagined.
<NHKラジオ 「英語5分間トレーニング」岩村圭南 講師>

◎◆◎アートのたのしみ《英国篇》◎◆

ジョージ・フレデリック・ワッツ“アダムとイヴ Adam and Eve”
(1865年・個人蔵) ◎絵の構図はわかりにくいのですが、左側に膝まずくエヴの頭 を両手で隠しています。背景の茶色の塊は樹の幹のようにに見 えます。左奥は青い山脈か、それとも海かも知れません。象徴 主義の絵の解釈は、見る人の自由です。 ◇ジョージ・フレデリック・ワッツ (George Frederic Watts,1817年2月23日 - 1904年7月1日) イギリスの肖像画家、寓意画家、彫刻家。ラファエル前派・象徴主義。 愛と生、死をテーマに寓意画を描き、肖像画も多く残しました。ワッ ツは、もともとも肖像画家で有名でしたが、象徴性によってラファエ ル前派に通じ、甘美な抒情性と象徴性のある作品によって、19世紀 後半(ヴィクトリア朝時代)、イギリスを代表する画家となりました。 1867年にロイヤルアカデミーの正会員に。准男爵への推挙を2度も断 る。87歳で生涯を閉じました。 “自画像”(1864年・テイトギャラリー、ロンドン)
GEORGE FREDERIC WATTS STATUE - LONDON
(beekay12 さんが 2007/06/10 にアップロード) 【 George Frederic Watts most famous work, the large bronze statue Physical Energy, shows a naked man on horseback shielding his eyes from the sun. A cast was placed at Rhodes Memorial in Cape Town, South Africa honouring the extravagant majestic ideas of Cecil Rhodes. A casting of this work overlooks the Serpentine in London's Kensington Gardens. Video by author Brian Kavanagh.  】