昔の人は、いつも命の危機に曝されながら暮らしていた
１ 茶の間から教育革命
・ホテル家族になっていないか
・社会規範の基礎・善悪の観念は家庭で形成された
・昔の人は、いつも命の危機に曝されながら暮らしていた
『子どもは茶の間で育つ―教育再生は家庭から』（３）
３号機地下で作業中３人被ばく、２人は病院搬送
さきほど、痛ましいニュースが入りました。 「 東京電力福島第一原子力発電所３号機のター ビン建屋地下１階付近で２４日午後０時９分 ごろ、淡水注入用のケーブル敷設を行ってい た作業員３人が被曝(ひばく)した。（読売新聞） 」 東電の責任は、ますます重い。問題の本質を 見失ってはいけないと思います。 ちなみに、次の記事をご参照ください。 「 新潟大学法学部教授の鈴木正朝氏は以下の至 言をツイートしました。 「現場は一生懸命なんだ式のエールが飛び交 ってますが、それは正にその通り。しかし、 その問題と電力政策の結果責任、過去の情報 公開の不徹底の責任は完全に別物。第二次世 界大戦の兵隊さんの真心と政府の戦争責任が 別次元である事と同じ。前者を以て後者の責 任を曖昧にするのは、大いに問題」。「尻拭 いは何時も現場。歴代役員こそ前線で見守る 責任が有るのではないか？」と。 」 【引用】 日刊ゲンダイ連載〈田中康夫「にっぽん改革」〉 （11/03/17） 嗚呼、平成の後藤新平、高橋是清は何処に！ 詳しくは： 嗚呼、平成の後藤新平、高橋是清は何処に！１ 茶の間から教育革命
「両親の愛を受けて育った子どもは、やが て夫婦の心に隙間風が吹くようになって も、かすがいとして二人の仲を取り持つ ようになるでしょう」ホテル家族になっていないか
日本の風土に合った木と土塀、紙の家屋も少 なくなり、畳からフローリングに椅子の洋風 の生活スタイルが一般的になりました。「茶 の間」もリビングになり、生活様式の変化と ともに、日本古来の文化も消えつつあります。 しかし、建物は変わっても、そこに住む人間 はそう簡単に変わるものではありません。ま た、時代や社会がどんなに変わっても、変え ずに、守り伝えなければならないものがあり ます。 その第一が家庭でしょう。茶の間がリビング と呼ばれるようになっても、そこが家族の集 う居間であることには変わりはありません。 家族の絆を深め、安らぎと憩いを与えてくれ るところなのです。 人間は一人で生まれ、育っていくものではあ りません。家庭を基盤に、先祖から連綿と続 く家族のつながりの中で生まれ、育てられて いくものです。 私たちが心のよりどころとしている家庭には、 単に安らぎの場というだけでなく、もっと重 要な役割があります。それは、家族が集まり、 基本的な人間関係を築いていくことです。 人間は社会的な動物ですので、互いに寄り集 まって集団を作る本能があります。動物学で は群居本能といいますが、それがあるから私 たちは家族を持ち、助け合ったり、いがみ合 ったりしながら、自分なりの人間関係を作っ ていくのです。 脳科学者の時実利彦は『脳と人間』（雷鳴社、 一九九八年）で、「人間の場合、完全の外部 と隔離し、更に感覚刺激をできるだけ少なく して実験室に入れると、数時間で幻覚がおこ ったり、イライラしたりして、とても長時間 はたえられない」と述べています。 集団欲は人間にとって非常に重要で、食欲や 性欲よりも根源的な本能であることが分かり ます。 戦後、家中心の家族制度が崩れ、個人主義は 普通になりました。 家族の絆も弱くなり、「ホテル家族」という 言葉があるように、ただ同じ家に一緒に住ん でいるだけという家庭が増えています。社会規範の基礎・善悪の観念は家庭で形成された
一方、社会全体で公徳心が欠如するようにな り、理解できない凶悪犯罪やモラルの崩壊が 目に付きます。また、年間三万人を超す自殺 者も、日本社会に深刻な問題があることを示 しています。 家庭は社会を支える一番小さな基本単位であ り、それゆえ、家庭は社会の縮図といえます。 その家庭における教育力の低下が危機的にま でなっているので、社会全体がおかしくなっ ているのです。 昔は、祖父母・親・子の三世代が同居し、互 いに支え合い、尊敬し合って暮らすことで、 子どもたちが健全に育っていたのですが、都 市化などの影響で核家族が広まると、そのよ さも失われてしまいました。 社会規範の基礎となる善悪の観念は、家庭に おける小さいころからのしつけで形成される ものです。 ところが、戦後は親子関係がフラットになり すぎて、規範のシンボルであるべき父親の権 威が失われました。 さらに少子化で、親の期待が一人や二人の子 どもに集中するため、結果的に甘やかしすぎ になり、厳しく子どもをしつけることができ なくなりました。 子どもが親や祖父母など、身近な家族を殺す 事件が頻発しています。それは命を大切にす るという基礎的な情操が養われていないとと もに、怒りなどでキレそうになる自らの衝動 を抑える訓練が行われていないからでしょう。 小さい我慢の積み重ねが克己心を養うのです が、子どもにやりたい放題をさせていると、 心にブレーキをかけることができなくなるの です。昔の人は、いつも命の危機に曝されながら暮らしていた
大きくなれば、人間として生まれてきたこと がどんなに感謝であるか理解できるようにな るのですが、それを悟っていくには、家庭に おいて親自身がその気持を持って生活してい なければなりません。 ところが、生活が豊かになり、経済中心の価 値観が優先されると、自分の力だけ生きてい ると勘違いし、人として生を受け、自然や社 会に生かされていることへの感謝の念が希薄 になりがちです。 昔の人たちは、いつも天災や天候不順による 不作などで命の危機にさらされながら暮らし ていました。 戦場に駆り出されたり、戦災の被害を受けた 人も多くいました。安全が容易に手に入るも のではなかったので、穏やか生活を望み、祈 りながら日々過ごしていたのだと思います。 ですから、今の人たち物資文明の恩恵で一見 幸福そうですが、心の豊かさではむしろ昔の 人のほうが勝っていたのではないでしょうか。 時には、便利な生活から離れてみれば、生か されていることの喜びを実感できるかもしれ ません。 幸福を求めて豊かな社会を作ったことが、か えって子どもたちを不幸にしてしまった面が あります。 物資的な豊かさをどうやって子どもの幸福に つなげるかが、今の大人たちに課せられた大 きな課題だといえます。 」 （つづく） (M223-82)『子どもは茶の間で育つ―教育再生は家庭から』（３）
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『子どもは茶の間で育つ―教育再生は家庭から』
単行本: 185ページ 出版社: アートヴィレッジ (2010/12) ◇目次◇ ・茶の間からの教育改革を ・親子の絆をしっかり ・育児と母親の役割 ・子どもが育ちにくい社会 ・父親のあるべき姿 ・子どもにとって父親とは ・祖父母の役割も大切 ・子どもを話し好きにするには ・携帯電話は警戒電話 ・親の期待を押し付けない〔ほか〕 ◇〈著者〉 ☆棚橋 嘉勝（たなはし・よしかつ）元郁文館学園校長 昭和８年、神奈川県生まれ。慶応大学文学部を卒業し、 慶応義塾中等部、嘉悦学園に勤めた後、祖父が創設し た郁文館学園中・高校で社会科を教え、同学園校長に 就任、理事長、学園長を務めた。また、東京・文京区 教育委員、慶応三田教育会会長、全国商業高等学校校 長協会副理事長などを務め、退職後も教育評論家、文 京区昭和小学校運営連絡協議会委員、東京教育防衛同 友会副会長など幅広く活動している。
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