我が道を行くからほっといてがＮＯの日本
『ロンドンはやめられない』（９）
〈著者〉高月 園子（たかつき そのこ）
〔・イギリス式不完全主義〕
・我が道を行くからほっといてがＮＯの日本
・一曲完璧主義より三曲以上九割でＯＫ
＜yuka's fotolife 黄昏＞
『ロンドンはやめられない』（９）
いま、日本社会が抱える閉塞感の一端を、 高月園子さんは、こうのような側面から 捉えます。 日本では、子供たちは早くから「ガリ勉 して一流大」「ガリ楽器して音大」「ガ リデッサンして美大」「ガリスポーツし てスポーツ選手」の選択を迫られます、 と。 ここで、ぜひ、ご紹介したい言葉があり ます。 東京大学の入学式で、建築家・東京大学 特別栄誉教授の安藤忠雄さんが平成２０ 年（２００８）４月１１日、祝辞を述べ ていますが、その抜粋です。 “私は皆さん方のように幸福にすばらし い学校に入れたわけではありません。私 は大阪の下町で生まれ育ちました。祖母 と２人で暮らしていて、経済的には厳し い状態でした。 「何とかして生きていかなくてはならな い」と思っている時、建築に出会いまし た。ちょうど、私の家が長屋の平屋だっ たものを、２階だてにする工事を隣の大 工さんがやっていて、それを手伝ったと いうことなのですが。屋根を取ると大き な空が見え、増築すると部屋が広がって いくのを見て単純に感動しました。 この感動が私を建築に目覚めさせたと思 います。中学卒業時に、大工の棟梁はい いなと思いました。 しかし、周囲の人たちがせめて高等学校 だけは行ったほうがいいという。経済状 態から言うと難しいと思いましたが、職 人になることなどを考えて工業高校の機 械科に入学しました。” “私が東京大学から教授として招聘され たとき、私自身がまず誰よりびっくりし ましたし、家族を含め周囲の人は反対で した。 しかし私は、どうしても優秀な人と一度 一緒に勉強したいと思いました。共に東 京大学で学びたかった。 その中で、高卒の人間を教授に招く、東 京大学の《勇気》ってすごいな、さすが だと思いました。 私は東京大学の《勇気》に感謝します。 私にできることがあるとすれば、東大が 私に託した、その《勇気》というものの 大切さを、私なりの形で、あなたたち学 生に伝えることだと思って今こうして話 をさせていただいています。” なんという忌憚のない心情の吐露だろう か。ただただ、胸を打たれるばかりです。〔・イギリス式不完全主義〕
我が道を行くからほっといてがＮＯの日本
「 私にも、ピアニストを夢見た少女時代が ありました。先生が徹頭徹尾の完全主義 でしたのでなかなかＯＫがいただけず、 一つの練習曲に一ヶ月以上もかかったり、 細かいとろを何十回もやり直しさせられ たり、汗と涙と落胆の日々でした。 発表会が近付くと週に三、四回もレッス ンがあり、とっぷり暮れた帰り道、変質 者っぽい男の人に追いかけられ、泣きな がら助けを求めて近くの家に飛び込んだ こともありました。 今思えば、どうしてそこまでやんなきゃ なんないの！ たかだか子供の発表会で しょ。ショパン・コンクールじゃないん ですよ。 とうとう音楽の楽しさを知らぬまま「選 択の時期」となり、あっさりピアノを捨 てたのでした。 選択の時期――それは、進学コースを歩 むか、それともそれ以外のコースを歩む かの選択を迫られる時期。私が子供だっ た六十年代には中三の夏休み前あたりで した。 今は小四で早々とすべての習い事をやめ て、中学受験ぬ備え塾一本に絞るとか。 日本では、子供たちは早くから「ガリ勉 して一流大」「ガリ楽器して音大」「ガ リデッサンして美大」「ガリスポーツし てスポーツ選手」の選択を迫られます。 どのコースを選んでも、待ち受けるのは 一筋の日々。「ＸＸ一筋ン十年」が幅を きかす社会ですから。 クラブ活動は二年生の秋まで。男女交際、 家族旅行も大学合格までお預け。完全主 義が行きわたった熾烈な競争社会ですの で、「二つのことがやれるほど世の中甘 くないぞ」という有言無言の脅しが、常 に子供たちの未知の世界への好奇心、チ ャレンジ精神、得意なものをすることで 得られる、生きる喜びや自信まで奪って しまいます。 その上、「我が道を行くからほっといて 」と言うことも許されない“村社会”で もあるのです。一曲完璧主義より三曲以上九割でＯＫ
二人の子供の教育をたまたまイギリスで できたことを幸運だったと思える一番の 理由は、イギリスの先生方が、そしてお そらくイギリスの社会自体が、不完全主 義であることだ。 たとえば、娘を例にとりますと、子供の ころに始めたピアノとクラリネットのレ ッスンを、大学に入り、先生宅に物理的 に通えなくなるまで、ずっと続けていま した。 その間、どちらの先生も、グレード試験 やコンクールで演奏する曲以外は、一つ の曲をたいていレッスン二回ほどで切り 上げ、さっと次の曲に移っていきました。 まったく未完成のままで。 一曲を完璧に弾けるようになる労力と時 間で、三曲以上が九割がた弾けるように なるのです。 子供からするとそれだけ達成感が大きく、 常に新鮮な気持ちで練習ができ、やる気 を再生していくことができます。 それに多くの曲に当たることで、断然、 譜読みが速くなるのです。娘の一年間の ピアノ曲は私の場合と比べ、五倍近くで した。 幸運なことに娘は王立音楽院の教授とい う大御所先生に習っていたのですが、あ の大嫌いだった、難しいだけで何の喜び も得られない「ツェルニー」も、お指の 体操「ハノン」もいっさいせず、すべて 発表会ででも弾くような美しい曲だけで のレッスンで、心から羨ましかった。 （続く） (M73-24) (M74-25休み) (M75-25休み)『ロンドンはやめられない』（９）
高月 園子さん：
東京女子大学文理学部史学科卒業。英米文学翻訳家。翻訳のほかに、 音楽関係の記事や、20年以上にわたるロンドン生活を題材にしたエ ッセイを執筆している。 主な訳書に、ラトレル＆ロビンソン『アフガン、たった一人の生還』、 スチュワート『戦禍のアフガニスタンを犬と歩く』、デュ・プレ姉 弟『風のジャクリーヌ』、スミス『めぐり逢う時はふたたび』、ア ヴィーソン『スプーン三杯の嫉妬』、ベッカム＆ワット『ベッカム ：マイ・サイド』などがある。高月 園子さん（画像）
リダイレクトの警告『ロンドンはやめられない 』 (新潮文庫)
文庫: 301ページ 出版社: 新潮社 (2010/8/28)クリスマスが嫌いで、ゴシップ大好き。親は子供の成功を恐れ、 物欲がなさそうでダイヤには目がくらむ。在英25年の駐在員夫 人が明かす紳士淑女の実態は、品がいいのか悪いのか。イギリ ス式子育て、人生を狂わされる駐在員たち、海外生活ならでは の失敗談など、おかしくも愛おしい珠玉のエッセイにちりばめ られた幸せの秘訣。 ＜目次＞ ・私様の教養コレクション ・子供の成功を恐れる親たち ・ロンドンで成金ウォッチング ・イギリス式不完全主義 ・イギリス人はクリスマスがお嫌い ・大学入試はユーモアで制覇? ・ＧＵＰの法則 ・コーヒー・モーニング発、ランチ経由、 ディナー・パーティ行き ・男と女のケミストリー〔ほか〕 以上
- 作者: 高月園子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/08/28
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[東京大学[総長室から]式辞・告辞集
平成20年度入学式（学部）祝辞 | 東京大学安藤忠雄建築展｢挑戦-原点から-｣
カール・ツェルニー - Wikipedia
カール・ツェルニー（Carl Czerny, 1791年2月21日 ウィーン‐1857年7月15日 ウィーン）は、オーストリアのピアノ教師・ピアニスト・作曲家。祖先はボヘ ミア出身のスラヴ人で、苗字の綴りは本来チェコ語?erny（チェルニー）。ドイ ツ語でも発音はチェルニーなのだが、日本ではツェルニーと発音･表記される事 が多い。作品番号は861に上り、未出版のものを含めて1,000曲以上の作品を残し た多作家であったが、現在は一般には実用的なピアノ練習曲を数多く残したこと で有名な存在である。一般の作品で現在最も多く演奏されるのは、ピアノ協奏曲 であろう。ベートーヴェン、クレメンティ、フンメルの弟子で、ウィーン音楽院 においてリストおよびレシェティツキの師。 カール・ツェルニー - Wikipediaツェルニー50番練習曲 全音ピアノライブラリー [楽譜]
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Czerny etude no. 50 op.740
シャルル＝ルイ・アノン - Wikipedia
シャルル＝ルイ・アノン（Charles-Louis Hanon, 1819年7月2日 - 1900年3月19日） は作曲家、ピアノ教師、オルガニスト。フランス共和国ダンケルク近郊で生まれ、 同国ブローニュ＝シュル＝メールで没す。日本国では英語風もしくはドイツ語風の ハノンの呼び名で有名。ピアノの教則本「60の練習曲によるヴィルトゥオーゾ・ピ アニストVirtuoso Pianist In 60 Exercises」は有名で、こんにちのピアノ教師に とって標準的な教材の一つとなっている。ピアノ音楽の領域で「ハノン」という場 合にはこの曲集を指す。これらの曲はフィンガートレーニングを行なうためのもの であり、楽曲として成り立っている他の練習曲とは性格を異にする。 シャルル＝ルイ・アノン - Wikipedia全訳ハノンピアノ教本 全音ピアノライブラリー [楽譜]
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ハノン 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12
☆☆ヨーロッパ古城巡り☆☆ フランス
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安藤裕子 / はじまりの唄
Δ▼Δ▼野次馬根性
◇◇◇お手並み拝見 菅直人首相
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