『ロンドンはやめられない』(8)
きょうは、アラブ系の大富豪の一人息子
にまつまる大散財のエピソードが出てき
ますが、その浪費の仕方が、皮肉にも、
どこか、貧乏ったらしい。
偏見を恐れずに言えば、所詮、砂漠の民
の末裔のDNDがなせるわざか。
薩摩次郎八を見よ。
東京・
日本橋 において一代で巨万の富を
築き「木綿王」と呼ばれた薩摩治兵衛の
孫として生まれる。
大正9年(1920)、十八歳で渡欧し、
イギリスのオックスフォード大学に留学
し、
ギリシア 演劇などを学びつつ、「ア
ラビアのロレンス」として知られたトー
マス・
エド ワード・ロレンスや、藤原義
江などと親交を結んだ。
なお、当時、月々の仕送りは、当時のお
金で1万円(現在の価値で約7000万
円)だったという。
大正11年(1922)には、当時の好
景気を背景に隆盛を極めていたフランス
のパリに向かった。
同じ金を遣うなら、世の成金たちよ、薩
摩次郎八を見習えたまえ。
パリでは、16区の高級住宅街に豪奢な
住居を構え、カンヌやドーヴィルなどの
リゾート地を行き来する生活を送り、イ
サドラ・ダンカンや
ジャン・コクトー な
どとの親交を深めた。
当時のヨーロッパの
社交界 にその名を轟
かすこととなった。その豪快かつ華麗な
振る舞いから、
爵位 がなかったのにもか
かわらず「バロン薩摩」と呼ばれた。
当時の金で二億円を投じて日本館を建設
し、また、
藤田嗣治 、原知智恵子、渡辺
一夫らパリに滞在した日本の芸術文化人
の
パトロン となった。
こんなわけ、フランスで、10年間で現在
の貨幣価値で約600億円使ったという。
しかし、昭和二十六年(1951)、無
一文となり、五十歳の次郎八は帰国した。
現代の成金にように、自家用機を買って
悦に入るしか、お金の遣いかたを知らな
い人とは、人間のスケールが違う。
〔・ロンドンで成金ウォッチング〕
毎日、アルマーニ のシャツを使い捨て
「
たとえば、リージェンツ・パークの北西
には昔から
ギリシャ 人の大金持がうじゃ
うじゃいるし、ボンド・ストリートでは
必ず、運転手つきの
ベントレー やロール
スロイスをバーンと店に横づけにして買
い物をしているアラブ系のマダムを見か
けます。
どうせ、すぐ裏のメイフェアやマーブル
アーチあたりに住んでいるんだから、歩
いてくればいいのに。
中でも
オイルマネー を手にした中東の富
豪こそが、いわば正当派の成金です。
べつに親の世代が骨身を削って労働し築
いた富ではないので、湯水のようにお金
を使って金ピカの生活をしても、何の後
ろめたさも感じないらしい。人目もいっ
さい気にしない。態度はあくまで尊大。
私の娘と息子が通ったロンドンのど真ん
中にあるパブリックスクルーでは、場所
柄、そんな成金の子弟たちも数多く寄宿
舎生活をしていました。
当時は帰宅後の子供たちから、彼らのあ
きれ返るエピソードを聞くのが、私の毎
日の楽しみでした。
中でも忘れられないのが、あるアラブ系
の大富豪の一人息子Sの話。
娘と同じクラスだったSの家族はすべて
の服を、普段着に至るまですべてアルマ
ーニに特注して作らせていたそうです。
寄宿舎には全自動洗濯乾燥機があり、寄
宿生たちは自分で洗濯するのですが、S
の親は「息子に洗濯などさせられない」
と言って、一学期に必要な枚数の、つま
り一学期に百枚近くのワイシャツをアル
マーニに作らせ(彼らにははした金です
から)、一日着るごとに捨てさせていた
のです。
アルマーニ のシャツを使い捨て。
そんな話を聞いた私は思わず娘に「わー、
何枚か拾ってきて。パパに着せるから」
とおねだりしてしまいました。「ママ、
そんなみっともないこと、できるわけな
いでしょう」と諭されて、シュン。
日本庶民がイギリス上流に憧れる???
そんなふうに常軌を逸した金遣いの荒さ
を、他人に何と言われようがいっさい気
にせずバンバン実行してみせるアラブ系、
ギリシャ 系、ロシア系の成金たちに比べ、
イギリス人の成金さんはもう少し屈折し
ていらっしゃる。彼らはそんなはしたな
いまねはしません。
何世紀もさかのぼる古い家柄を誇る上流
階級に対する憧れが強いので、たとえピ
ッカピカの派手な生活が可能でも、わざ
と上流の人たちのような地味で上品なカ
ントリー志向のライフスタイルを演出し
たり……手がこみすぎ。かえっていやら
しいかも。
でも、イギリス人の成金さんがイギリス
上流階級の生活に憧れ、まねるのは自然
だし勝手だけど、悲しいし理解できない
のは、日本庶民がなぜかイギリス上流に
憧れる傾向。
日本の女性雑誌には定期的に「イギリス
女流に学ぶ本物のエレガンス」だの「英
国上流マダムにテーブルセッティングを
学ぶ」だの「
マナーハウス の暮らしに学
ぶ
シンプルライフ 」だのと、イギリス上
流に「学ぶ」特集が組まれています。
私はそんなのに出くわすたびに、身内の
おべんちゃらを言われてような気恥しさ
に、思わず立ち読みしていた雑誌をパタ
ッと閉じて、書店をあとにします。
いや、そんなのはまだいい。恥ずかしさ
の極めつけが、「レディ・XXを囲んで
マナーハウス で
アフタヌーン ・
ティー 」
といった類(たぐい)の、日本のツーリ
ストや駐妻(駐在員の妻)をカモにした
催し。
みなさん、ああいうものに行くのだけは
やめましょうよ。私だってちょっと行っ
てみたい気持ちをぐっと抑えているんで
すよ。
レディ・XXと美味しくもないスコーン
つきのお茶をいただいて、日本では何の
役にも立たないテーブルマナーのお話を
通訳つきで伺って、いっしょにお写真を
撮らせていただいて(これですよ、これ、
参加者の目的は)、何十ポンドも払って、
……それでは日本人としてあまりにプラ
イドの無さ過ぎ。悲しいじゃありません
か。涙が出そう。
でも、そんなふうに常に西洋に憧れ、学
ぼうとする謙虚で卑屈な姿勢が、きっと
その成金ぶりにもかかわらわず、国際社
会でさほど嫌われていない理由なのかも
しれません。
一方、日本や他国からお恵みを頂戴する
立場にありながら、ありがとうもいわず
えばりくさる国もあるくらいですから。
」
〔・ロンドンで成金ウォッチング〕了
(続く)
(M72-24)
『ロンドンはやめられない』(8)
高月 園子さん:
東京女子大学 文理学部 史学科卒業。
英米 文学翻訳家。翻訳のほかに、
音楽関係の記事や、20年以上にわたるロンドン生活を題材にしたエ
ッセイを執筆している。
主な訳書に、ラトレル&ロビンソン『アフガン、たった一人の生還』、
スチュワート『戦禍の
アフガニスタン を犬と歩く』、デュ・プレ姉
弟『風のジャクリーヌ』、スミス『めぐり逢う時はふたたび』、ア
ヴィーソン『スプーン三杯の嫉妬』、
ベッカム &ワット『
ベッカム
:マイ・サイド』などがある。
『ロンドンはやめられない 』 (新潮文庫 )
文庫: 301ページ
出版社: 新潮社 (2010/8/28)
クリスマスが嫌いで、ゴシップ大好き。親は子供の成功を恐れ、
物欲がなさそうでダイヤには目がくらむ。在英25年の駐在員夫
人が明かす紳士淑女の実態は、品がいいのか悪いのか。イギリ
ス式子育て、人生を狂わされる駐在員たち、海外生活ならでは
の失敗談など、おかしくも愛おしい珠玉のエッセイにちりばめ
られた幸せの秘訣。
<目次>
・私様の教養コレクション
・子供の成功を恐れる親たち
・ロンドンで成金ウォッチング
・イギリス式不完全主義
・イギリス人はクリスマスがお嫌い
・大学入試はユーモアで制覇?
・GUPの法則
・コーヒー・モーニング発、ランチ経由、
ディナー・パーティ行き
・男と女のケミストリー〔ほか〕
以上
「バロン・サツマ」と呼ばれた男―薩摩治郎八とその時代
Bond Street - Wikipedia , the free encyclopedia
Bond Street is a major shopping street in London which runs through
Mayfair from Piccadilly in the south to Oxford Street in the north.
It is one of the principal streets in the West End shopping district
and is more upmarket than nearby Regent Street and Oxford Street.
It is in the Mayfair district of London, and has been a fashionable
shopping street since the 18th century.
Bond Street - Wikipedia
ジョルジオ アルマーニ 帝王の美学 [ハードカバー]
秘蔵写真220点以上を収録した初の評伝。
「僕はひとつの道を選んだ。デザイナーは誰しも自分の道を選ばなければ
ならいからね。そうやって創りだした独自のスタイルは、これからも守っ
ていかなければならないと思う」。
男女の性差を超えた融合というそれまで誰にも考えつかなかったア
イデア
を携え、モード界に颯爽と登場した男、
ジョルジオ・アルマーニ 。従来の
構造を崩したソフトジャケット、
ユニセックス なデザイン、「グレージュ」
カラーなどの
アルマーニ 独自のスタイルは、モード界に一大旋風を巻き起
こした。「モードの帝王」と称され、華やかな一面ばかりがクローズアッ
プされる一方、そのプライベートはほとんど語られてこなかった。
ナイト(Knight)は、イギリス(
連合王国 )の叙勲制度において、叙勲
者に与えられる、中世の騎士階級に由来した称号である。日本語では勲
功爵、勲爵士、騎士爵、士爵などの訳が見られるほか、ナイト爵と片仮
名で表記されることも多い。ただし、ナイトは現行イギリス法上では貴
族とされる身分ではなく、その称号はあくまでも栄典の授与(叙勲)で
あって、
爵位 の授与(叙爵)にはあたらないので、日本語で「爵」の字
を用いて訳するのは混同を招き、適切ではない。
ナイトに叙任された男性はSir(サー)、その夫人は Lady(レイディ)
の敬称をつけて呼ばれる。また女性でナイトに相当する叙勲を受けた者は、
Dame(デイム)の敬称をつけて呼ばれる。ただし「サー」や「デイム」は
サーネーム(姓、苗字)ではなく、名である
ファーストネーム 、またはフ
ルネームの前につける敬称である。
ナイト - Wikipedia
読売新聞社 (編集)、「万葉のこころを未来へ」推進委員会 (編集)
北風が登校中にふきつける手袋一つが母のようだ
池田隼大(15歳)愛知県
平成万葉集
☆☆ヨーロッパ古城巡り☆☆ フランス
新しい世界の文学〈65〉半島 (1974年) [古書]
★米国ゴルフコース見参 ルイジアナ州 ラフィーエット★
Acadian Hills
500 Acadian Hills Ln
Lafayette, LA 70507
(337)232-4010
"Acadian Hills (Acadian Hills)" Flyover Tour :
VIDEO
Changi Village Hotel
1 Netheravon Road Singapore Singapore
Changi Village
Hotel , Singapore :
VIDEO
◇気になるサイト◇**
上原ひろみ / DEEP INTO THE NIGHT
VIDEO
アンブローズ
ビアス (著)、Ambrose Bierce (原著)、西川 正身 (翻訳)
石破茂 政務調査会長 定例記者会見(2010.10.20)
10月20日午後1時から党本部・平河クラブ会見場