岸恵子著『私の人生 ア・ラ・カルト』(15)
第二部 「母と娘、それぞれの孤独」(4) “よさこい節”(下)
あたし、とてもしあわせなの
岸恵子著『私の人生 ア・ラ・カルト』(15)
第二部 「母と娘、それぞれの孤独」(4) “
よさこい節”(下)
じゃ、いい? 腰を抜かさないでよ
“
よさこい節”(下)
「お台所はどこ?」
娘はちょっと複雑なほゝえみを浮かべて
蓮っ葉な笑い声をあげた。
「見ない方がいいと思うけどな。タダで
も
不眠症のママンの、ごくごく僅かな
睡眠時間まで破滅的なものなると思う
けどな」
「なに言ってるの? お巡りさん夫婦が
立派に新婚生活をいとなんだ台所でし
ょ。なにが破滅的よ」
「じゃ、いい? 腰を抜かさないでよ」
「底の抜けたソファの中で、腰はとっく
のムカシに抜けてますよ」
そこだけ、ヤケに
瀟洒な細身のドアを娘
があけ、畳一じょう半ほどの細長い台所、
と呼ばれる空間というか、お皿や鍋やコ
ーヒー
カップが目白押しに詰まっている
流し台と冷蔵庫と、シャワーとトイレが
一緒くたに雑居している場所を一目みて、
私はすみやかに了解し、そして愕然とし
た。
あたし、とてもしあわせなの
激しい吹き降りではあるけれど、それに
しても御台所は盛大な雨漏りである。
赤いプラスチック製のバケツやスープ皿、
私の大事な
古伊万里の小鉢などがそここ
こに置いてあり、ポタン・パタン・ピシ
ャン・パシャンと春の
氷雨の
交響曲であ
る。
「昔、ここはキッチンだけで、シャワー
やトイレは階段の途中にある共同のも
のを使ったんですって。人に貸すこと
になって半分に区切って全部つけちゃ
ったものだから、狭くて狭くて湯槽も
ちいさくて髪を洗うと躰を洗うお湯が
なくなるの」
「だから雨が降るとシャワーが浴びない
し、お料理もしないのよ」
底の抜けたソファの中で、私は完全に腰
を抜かしてしまった。
「ママン」
娘はかぎりなくやさしいほほえみを浮か
べて言った。
「来週、職人さんが来て、屋根がわらな
おしてくれるの。ここの棲み心地とて
もいいのよ。あたし、とてもしあわせ
なの」
春雨の夜の中を、私はひとり家路に着
いた。
雨にしてはほんの少しなまあたた過ぎ
るものが、ホロリホロリと頬を濡らし
てゆく。そして私は、低い低い声で、
よさこい節をうった。
ヾ ヾ ヾ
読み通すのがやっとでした。私には父親
としての経験しかありませんが、母親の
気持ちが痛いほど伝わってきます。男の
ホロリホロリをごまかすために、一緒に
よさこい節をうたいました。
土佐の高知の
播磨屋橋(はりまやばし)で
坊さんかんざし 買うをみた
ヨサコイ ヨサコイ
御畳瀬(みませ)見せましょ 浦戸(うらと)をあけて
月の名所は 桂浜(かつらはま)
ヨサコイ ヨサコイ
よさこい晩にこいと いわんすけれど
来てみりゃ真実こいじゃない
よさこい よさこい
土佐はよい国 南をうけて
さつまおろしが そよそよと
よさこい よさこい
パリ マレ地区のこと:
パリの
セーヌ川右岸に広がる地区。現在
おしゃれな人々が集まる地域として挙げ
られるこの地区は、16〜18世紀の面影を
残す情緒あるエリアです。
貴族の館が多く、ヴォーヴェ館はモーツ
ァルトが7歳の時に招かれ滞在した所と
して知られ、サレ館は今では
ピカソ美術
館として使われています。
ヴォージュ広場近辺には、ヴィクトル・
ユーゴー、ドーデをはじめとした多くの
芸術家が住んでいました。
最近ではおしゃれなショップ、レストラ
ン、バーが増え続けています。
(続く) (N176-26)
あたし、とてもしあわせなの
◆あの人は…今岸恵子さんと娘さん
デルフィーヌ=麻衣子・シャンピ Delphine Ciampi
Royal Hawaii あの人は今・・・岸恵子とその娘
◆小さなパリ情報 〜パリのアパート事情〜:
小さなパリ情報
◆パリ マレ地区 地図:
Google マップ
私の人生ア・ラ・カルト (単行本)
単行本: 270ページ
出版社:
講談社 (2005/01)
発売日: 2005/01
<目次>
第1部 私を女優にした眼
第2部 母と娘、それぞれの孤独
第3部 ドジな女の大騒動
第4部 「干渉の義務」
第5部 なつかしい人たち
第6部 「あの女、メトロのにおいがする」
第7部 時代をわたる風
第8部
大義と正義の罪
以上
イヴ・シャンピ - Wikipedia
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内藤富夫(67歳)東京都
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