バコールに電撃にあったように魅せられる

岸恵子著『私の人生 ア・ラ・カルト』(5)

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バコールに電撃にあったように魅せられる

岸恵子著『私の人生 ア・ラ・カルト』(5) 第五部「なつかしい人たち」 “ローレン・バコールがいる”(5)
演奏会用序曲「はしがき(其の三)」
――私は僻地放浪の好きな女となった。 心に棲みつく風景は無数にあるとも言え るし、一つもないような気をする。 音もなく、青く光っていた横浜の海。空 襲で焼けただれた廃墟の横浜。そこに昇 った黒い石榴のような太陽。 父の顔、母の顔、それらにオーバーラッ プするさまざまな風景の中の顔。人生は たしかに抱えきれない数コマの映像なの だと思う。 それらは今、あかね雲に覆われた巴里の 空に浮かんでは消え、残照を浴びて黄金 色に輝き、やがては夜の中に昏れ落ちる。 これらの映像こそ私の心に咲くゴージャ スなラストシーン。祭囃子の音頭が聴こ える。ピーヒャララ、ヒャッ、ヒャッ。 いせな祖父の肩車に乗って幼い私が踊る。 両手をかざして。―― 序曲を聴き終えて、思い起こしました。 1996年から、岸恵子さんは、国際連合人 口基金の日本の初代親善大使を務めたこ とを(2002年からは、有森裕子さんが務 めています)。 2002年にフランス共和国政府よりフラン ス芸術文化勲章オフィシエ受賞したこと を、また2004年の旭日小綬章受賞のこと。
バコールに電撃にあったように魅せられる
第五部“ローレン・バコールがいる”(5) ローレン・バーコルが、花柄のスカート を花のようにひらいて坐っていたのは、 ホテルのプールサイドでもなく、ホール デン邸の日本の浮世絵がそここにかけら れたプールサイドでもなく、やはり、ビ ヴァリィヒルズにある、チャーリー・フ ェッドマンという、当時、キラ星の如き 大スターを一手に集めていたプロデュー サー兼マネージャーの豪華なガーデンパ ーティーでありました。 チャーリー・フェッドマンはパリのモデ ル出身の美人女優キャプシーヌに熱をあ げ、キャプシーヌはホールデンに熱をあ げ(後年キャプシーヌは一時期ホールデ ン夫人となった)、ホールデンは、ちょ っぴりペンペン草の岸恵子サンに好意を 抱いていてくれたようでした。 そしてペンペン草の私は、震えるほどス テキな低い声でしゃべるローレン・バコ ールに電撃にあったように魅せられてい たのです。 「パリ製ね、あなたのドレス。一目で分  かるわ」 ひゅーんと唇を裂くように笑って、モス グリーンのカシミヤ地で作ったフレアの 多い私のドレスをつまみあげた。 「誰がつくったの」 「アルウィン」 「ヒューッ」 とバコールは少し蓮っ葉に口笛を吹いた っけ。当時、アルウィンはかなりの知れ た舞台衣装のデザイナーでありました。 ハリウッド行きを不承ゝゝ承諾してくれ た夫イヴ・シャンピからのプレゼントで した。
ニューヨークで20年後、運命的な再会
それらの日々から約二十年たった一九八 二年一月十三日、私は十八歳になった娘 を伴って、もう何十分もケネディ空港の 上を旋回せいているエア・フランス機の シートで苛々していた。 視界は全く利かず、午後三時というのに 黯ずんだ大気の中で、時折翼になだれか かるひさんだ雪のかたまりを睨んで航空 安全御守をにぎりしめてていた。 「これだからイヤ、ヒコーキは」 「ママーン、ヒコーキが悪いじゃないで  しょう。ニューヨークは嵐なのよ。  『ユキノアラシ』」 三ヵ月前から日本語をやり出したムスメ がおぼつかない日本語で言ったものです。 「ユキの嵐はね、吹雪というの」 言い乍ら、吹雪なんて生易しいものでは ないと思った。雪国というものを知らな い浜っ子ぼ私は、吹雪というと、まろや かなぼたん雪が狂想曲に乗って舞い散っ ているという幻想的なイメージが湧く。 雪の恐さを私は知らない。 私と娘は、数時間遅れて凍てつくニュー ヨーク・シティへ着いた。ほとんど時を 同じくして、ワシントンで離陸直後のフ ロリダ・エアラインのジェット機が、吹 雪になぶられ、高度をとり切れず、ホワ イトハウスのほんの近くでポトマック河 にかかる橋に衝突し、橋を毀し、橋上を 走っていた渋滞中の車までさらって凍っ た大河になだれ落ち、七十八名の死者を 出すという惨事が起きていた。 私は運命的なものを感じずにはいられな い。氷点下二十度に達する、厳冬のニュ ーヨークに、なぜ、こんな思いまでして ローレン・バコールのブロードウェイ復 帰作、大ヒット中でもある「ウーマン・ オブ・ザ・イヤー」を観にこなければな らないのか。「花椿」という雑誌に原稿 を書くため、という一応の理由はあった のだが……。(続く)(N165-24)

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私の人生ア・ラ・カルト (単行本)
私の人生 ア・ラ・カルト

私の人生 ア・ラ・カルト

単行本: 270ページ 出版社: 講談社 (2005/01) 発売日: 2005/01 <目次> 第1部 私を女優にした眼 第2部 母と娘、それぞれの孤独 第3部 ドジな女の大騒動 第4部 「干渉の義務」 第5部 なつかしい人たち 第6部 「あの女、メトロのにおいがする」 第7部 時代をわたる風 第8部 大義と正義の罪 以上
イヴ・シャンピ(Yves Ciampi, 1921年 - 1982年)
イヴ・シャンピ - Wikipedia
≫平成万葉集
ダムゆえに流れの切れし江の川も陰陽むすびし舟道たりし
藤田優美(81歳)島根県 平成万葉集
☆ヨーロッパ古城巡り☆ スペイン
Ampudia, Palencia, Castile and Leon, Spain. Ampudia - Wikipedia Ref. Halo
Halo (UK 2-Track)

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