言語の違いに優劣はないと、今だから言える

『日本語教のすすめ』(3)

<estelの記録帳 動物 板橋区立熱帯環境植物館 目が合った!>
単数複数、時制、冠詞、がなんだ
鈴木孝夫さんは、日本語が不完全で不便 な言語であるという考え方に、次のよう に反駁します。 もし、漢字がアルファベットなどと違っ て教育の普及を阻害する悪魔の文字であ ったならば、どうして、日本人はそれら を棄てることもなく使い続けながら、わ ずか百年足らずの間に、アジアの一後進 国から、教育の最も普及した世界有数の 経済技術大国へと発展することが出来た であろうかと。 日本の奇跡的な戦後の高度経済成長も今 より、遥かに煩雑な旧漢字と旧仮名遣い で育った世代の日本人の手によるもので した。 しかし、明治開国後当時の日本人の心情 を想像するに、直面した西欧の文明文明 こそが、地球上最善至高のもので、これ こそ人類の普遍的なあり方、物事すべて の規範を示すものだと思ってしまったの には無理からぬところがあります。 だから、ごく近い親戚関係にある欧米の 諸言語が、当然の結果として皆共通して もっている言語上の諸特徴、例えば、単 数複数の区別、現在・過去。未来などの 時制の明示、そして、冠詞や関係代名詞 などを持たない日本語は、言語としては、 規格外れの不完全で未発達の段階にある 劣等なものだと考えてしまったのです。
どの言語にも優劣などない
しかし、このことは、開国当時の日本人 が、彼我の文明の間に見られる大きな落 差に肝を潰した結果、そのように一方的 に思い込んでしまったとはばかりとも言 えないのです。 当時の西洋人自身が事毎に、宗教をも含 む西欧の文化文明、法律や社会制度、そ して白人そのものまでが、人類の最も進 歩発達した段階にあるという思い上がり を、臆面もなく主張していたからです。 十九世紀中葉に発表されたばかりの進化 論をかざして、人間のあり方にまで拡大 して当てはめた西欧諸国の社会進化論的 な思想が、日本語は未発達な劣等言語だ という日本人たちの思いこみを助長させ るのに大いに与るところがあった、鈴木 さんは考えています。 その後、世界の諸言語についての学問的 な知見が深まるにつれて、西欧の諸言語 は、数ある人間言語の類型的グループの ただ一つに過ぎず、それは言語一般の典 型でも規範を示すものでもないことが、 現在では言語学の常識になっています。 言語には様々な違いがあるが、その違い のどれもが、文化文明の優劣に繋がるも のではないことが判ってきました。だか ら、日本人が西欧語とは、全ての点で異 なる日本語を使ったままで、不可能と思 われた社会の近代化を短時日に成し遂げ ることが出来たのは、別に驚くことでは ないのです。(続く) (N88-4)
日本語教のすすめ (新潮新書)

日本語教のすすめ (新潮新書)

『日本語教のすすめ』 新書: 252ページ 出版社: 新潮社 (2009/10) 発売日: 2009/10 <目次> 第1章 日本語は誤解されている(日本語ってどんな言語    漢字の読みはなぜややこしいのか    ラジオ型言語とテレビ型言語) 第2章 言語が違えば文化も変わる(虹にはいくつの色があるのか    太陽は世界のどこでも赤いのか    蛾と鯨が同じ理由    文化によって異なる羞恥心) 第3章 言葉に秘められた奥深い世界(天狗の鼻は「長い」ではなく「高い」    形容詞の中身はなに?    江戸時代、「日本酒」はなかった) 第4章 日本語に人称代名詞は存在しない(身内の呼び方の方程式    日本語の人称代名詞を巡る問題    指示語と自己中心語のしくみ    「人称」の本質は何か) 第5章 日本語に対する考えを改めよう(日本人のもつ相手不在の外国語観    日本語教のすすめ) 鈴木 孝夫略歴: 1926(大正15)年、東京生まれ。慶応義塾 大学文学部英文科卒。慶応義塾大学名誉 教授。
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