世にも不思議な日本語放棄論の面々

『日本語教のすすめ』(2)

<estelの記録帳 草花 可憐な白>

健全なる知性とは何か

人は、いわゆる知性が高いからといって 必ずしも健全なる行動を取るかいうとそ うでもないらしい。知性とは一体何だと 考え込んでしまう。
森有礼 初代文部大臣
明治の初め、日本の初代文部大臣となっ た森有礼、戦前戦後を通しての大文豪の 志賀直哉、憲政の神様とまで尊敬された 大政治家の尾崎行雄(咢堂)、いずれも 半端じゃない知性の持ち主である。こ の三人の共通点はなんでしょう。 いずれも、「日本語放棄論」(鈴木孝夫 氏の呼称)を唱える面々である。森有礼 は、「英語為邦語乃論」で、英語を国語 にしようと主張した。 明治期という時代背景があるにせよ、遅 れた日本語では、進んだ西欧文明を取り 入れ、国を進歩させることは難しいから、 英語を多少改良した上で、国語として取 り入れよと説いた。 学校の教科書で知った時は、森有礼さん を尊敬していたのに、がっかりしちゃい ます。 平成の時代にも、ハーバード・ビジネス ・スクールの教えを信奉して、よき日本 を壊した人もいましたから、まさに性懲 りもなく歴史は繰り返すんですね。
志賀直哉 小説の神様
志賀直哉は、敗戦の翌年昭和二十一年の 四月、雑誌『改造』に「国語問題」と題 する文章を載せ、その中で日本が愚かな 戦争をして惨めな結果を味わうことにな った原因を、すべて日本語の持つ不完全 さ、不便さ、漢字学習の効率の悪さのせ いにしている。 そして、こともあろうに敗戦を機に日本 語の代わりにフランス語を国語にすべき という提案を真面目に行ったのです。 「小説の神様」ともあろう御方は、どう したんでしょうかね。老耄と呼ぶには、 チト早すぎる御歳(六十三歳前後)です のに。
尾崎行雄 憲政の神様
尾崎行雄は、衆議院議員を何期も務め、 文部大臣も経験した論客ですが、〈日本 語という幽霊〉を退治し、非能率な漢字 を追放しなければ、日本の民主化は望め ないと主張して、日本語廃止運動の賛同 者を求めてアメリカまで行っています。 同情的に言って、敗戦トラウマ症候群に 罹ったのでしょうか。 悲しくなるのは、御三方が曲学阿世の徒 ならば、いざ知らず、諦めもつきますが、 その道の第一人者の行為なのが、はなは だ残念です。 なにを、勉強していたんですかね。日本 語を、母語を、否定するのは、自己否定 に等しいではありませんか。私には分か りません。 鈴木孝夫先生は、きっと怒ってこの本を 書いた と思います。 ふつう、どの国民も自分たちの母語に対 して絶大の信頼と愛情をよせ、大切にし ています。母語を放棄するなど考えもし ません。
ドーテ『最後の授業』
いま、アルフォンス・ドーテの短編小説 『最後の授業』を思い出しています。 アルザスに住むフランツ少年は、学校に 遅刻してしまい、アメル先生に鞭で叩か れるのでは、と心配したが、先生は何時 になく優しく着席を促した。 今日は教室に元村長をはじめ、多くの大 人たちが集まっている。アメル先生は生 徒と教室に集まった大人たちに向かって、 自分が授業をするのはこれが最後だと言 う。 普仏戦争でフランスが負けたため、アル ザスはプロイセン王国ドイツ帝国)領 エルザスになって、ドイツ語しか教えて はいけないことになり、アメル先生もこ の学校を辞めなければならない。 これがフランス語の最後の授業だと語り、 生徒も大人も授業に熱心に耳を傾ける。 アメル先生は「ある民族が奴隸となって も、その母語を保っている限りは、その 牢獄の鍵を握っているようなもの」と、 フランス語の優秀さを生徒に語る。 やがて、終業の時が来て、プロシア兵の 鳴らすラッパの音を聞いた先生は顔面蒼 白となる。 挨拶をしようにも言葉が出ず、黒板に、 「Vive La France!」(フランス万歳!) と書いて「終了した。 みんな帰ってよろしい」と手で合図し、 “最後の授業”を終える。(続く) (N87-4)
日本語教のすすめ (新潮新書)

日本語教のすすめ (新潮新書)

『日本語教のすすめ』 新書: 252ページ 出版社: 新潮社 (2009/10) 発売日: 2009/10 <目次> 第1章 日本語は誤解されている(日本語ってどんな言語    漢字の読みはなぜややこしいのか    ラジオ型言語とテレビ型言語) 第2章 言語が違えば文化も変わる(虹にはいくつの色があるのか    太陽は世界のどこでも赤いのか    蛾と鯨が同じ理由    文化によって異なる羞恥心) 第3章 言葉に秘められた奥深い世界(天狗の鼻は「長い」ではなく「高い」    形容詞の中身はなに?    江戸時代、「日本酒」はなかった) 第4章 日本語に人称代名詞は存在しない(身内の呼び方の方程式    日本語の人称代名詞を巡る問題    指示語と自己中心語のしくみ    「人称」の本質は何か) 第5章 日本語に対する考えを改めよう(日本人のもつ相手不在の外国語観    日本語教のすすめ) 鈴木 孝夫略歴: 1926(大正15)年、東京生まれ。慶応義塾 大学文学部英文科卒。慶応義塾大学名誉 教授。
◇洒落ているなサイト◇
秋元順子 公式サイト http://www.apc-brain.co.jp/junko-akimoto.html
≫平成万葉集
ひたすらにわが眼を見詰め話しくる日本語を学ぶプラニーさんは
磯野純子(67歳)千葉県 平成万葉集
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