日本人留学生に、侮蔑から羨望へ

英語と日本人に関わる深い谷(3)『英語と運命(11)』

<estelの記録帳 関西の景色 青空に浮かぶ唐門>
「メシのタメ」の英語からスタート
なぜ 日本人は英語が上手くならないの かという疑問の答えが探しなら、私はこ の本を読み続けています。 中津燎子さんの若かりし頃に比べると、 日本人を取り巻く英語学習環境は大分良 くなっているが、日本人の英語ベタは依 然として改善されていない。 中津さんが「未来塾」を始めたきっかけ も、「これほどまでに熱心な英語学習意 欲を持った日本人がいるのに、なぜ成果 がそれほど思わしくないのか。 そのわけは、いったい何だろう?」とい う好奇心から出発している。中津さんの 人生は、この命題を追いかけての一生だ と言える。 この本の題名『英語と運命』のサブタイ トル「つきあい続けて日が暮れて」に如 実に現れている。その運命に胸が痛むほ どである。 中津さんが、戦後すぐに英語の勉強にか かりきりになったのは、単純に「メシの タネ」、または「金」のためだった。 昭和二十年以降の占領時代は一円でも多 く金を稼ぎ、家族に重くのしかかる重税 を払い、空腹を満たした。時には、仕事 場での英語のケンカで勝利を収めて憂さ をはらしていた。 そんな時代は、他の人間がどうやって英 語に取り組んでいるかに、百パーセント 関心がなかった。関心がないまま、留学 生として渡米し、そこでぶつかったのが、 当時はそれほど多くはなかった日本人留 学生グループだった。
1950年代日本人留学生の特色
圧倒的に男性が多かったが、彼らの特色 は、実に高度の英語の文章をなんの苦労 もなく、左から右にひねり出し、しかも スラスラときれいな筆記体で書き流して ゆく、分厚い英語の本も読んで一応理解 出来る。 だが、彼らはそれを口頭でアメリカ人に 伝えることが、ほぼ不可能だった。悲し いかな、一言も聞きとってもらえなかっ たのである。 結局、アルバイト通訳として、たまたま 大学事務局の電話に出てしまった中津さ んが、「何がなんだか分からない発音の 言葉でしゃべる東洋人たち」と、大学の 女性事務員連中との間で仲立ちになり、 しこたま、脂汗を流す羽目になってしま った。 その場のてんやわんやは、「敵だった日 本人が英語の読み書きを完全に出来る筈 がない!」という独断に加えて、「何よ、 このヘンな音が?」という、初めて耳に する生の日本語なまりへの偏見がない交 ぜになった結果だった。
日本人留学生の反撃
日本人にも、少しはいいことないとね。 やっっちゃいられませんよね。 1950代のアメリカ中西部の女性たちのガ ンコな「常識」をくつがえすためには、 「日本人にはしゃべらせるな、ひたすら に書かせるべし」とばかりに、四人いた 留学生たち全員に、各自の希望項目やら、 注文、疑問を、英文で書いて提出しても らった。 なぜ、そうしたかいうと、彼らのパスポ ートの中の英字によるサインがかなりの 達筆だったので、どう見ても相当に英文 を書きなれている。 だとしたら、筆談のほうが分かりやすい。 そして、それが当たった。特に、女子事 務員たちの関心を集めたのは、Mさんと いう二十六歳の青年のすごくきれいなス タイルの筆記体で書かれた、質のいい英 文であった。 「なんて優雅な、すばらしいペンマンシ ップでしょう」。 それ以来、大学の女子事務員たちは、こ の四人の学生たちを、陰に日向にサポー トし始めた。 中津さんは思うのである。 現在、こうした美しい文字で英文をスラス ラ書けて、意思が通じる日本の学生は実在 しているだろうか。 1950年から1960年にかけての日本は、英語 に限らず、外国語関係の書籍は高額すぎて 個人の手に入らなかった上に、コピー機も 存在していなかったから、学生たちは、ひ たすら原本から書き写しつづけるしかなか ったのである。 「読書、百ぺん 意、自ずから通ず」の筆 写版である。写しているうちに構文も語彙 もスポンジにしみこむ水のごとく、うまく アタマに入っていったとしか思えない。(続く) (N84-4)
英語と運命―つきあい続けて日が暮れて

英語と運命―つきあい続けて日が暮れて

<目次> プロローグ 好奇の虫 第1章 初期の音 第2章 九十平とウメ 第3章 不協和音ブルース三代記 第4章 ボルシチ語とみそ汁語 第5章 メシの種 第6章 朝鮮動乱と英語 第7章 秘訣は「WHY?」と「BECAUSE」 第8章 通訳の限界は皮膚下3糎か5糎 第9章 二人の神父と四人のボランティア 第10章 アメリカン・ドリーム 第11章 アメリカン「悪夢」 第12章 未来塾とヒグマ・ザ・モンスター 第13章 英語と日本人に関わる深い谷 第14章 無責任桃源郷 第15章 一トン爆弾と戦陣訓と東条英機 第16章 理想の英語学習プラン エピローグ 河内の里の最後のクラス
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