低学年丸投げ型英語教育の危険

理想の英語学習プラン(3)『英語と運命(7)』

<estelの記録帳 関西の景色 京都大階段>
外国人学校の目的を誤解
日本国内の外国人学校は、当然ながら、 在日外国人子弟のために設立・運営され ているので「異文化多言語教育」を専門 に、たくさんの異人種を故意に集めて、 専門教育をしている学校ではない。 英語圏から来た子供たちは、たしかに英 語で授業を受けるが、それと共に、社会 や歴史その他は、各母国の基準に従って 授業が行われ、日本の歴史や社会に関わ る内容は、当然のように表面的なものと なる。 外国人学校に子供を入学させた両親は、 このことをわかっているのだろうか。将 来の子供の人間像について「英語が上手 になってほしい」ということにだけ集中 していることが理解しにくい。 決して安くない、むしろ普通より高額の 月謝を払い、近所の同世代の子供たちと のふれあいを犠牲にしてまで、英語は手 に入れるべきほどの貴重な宝物なのか。 この英語への丸投げの仕方によっては、 子供にロクなことが起こりかねない。両 親から丸投げされた形で習得した英語が、 両親の代わりに心の柱となり、愛情の元 になるとは限らないである。
下手な英語に不寛容な英語人間
中津燎子さんの知人の一人に、この「丸 投げ」の犠牲になった思われる人がいた。 その知人、H氏は昭和三十年前半のころ、 十二歳で日本の小学校を卒業し、両親の 意向でアメリカンスクールの中学部(ジ ュニアハイスクール)に転校させられた。 日本人の両親は二人とも教育学専攻の学 者だった。アメリカンスクールの教育に 何を期待したか分からないが、当時とし ては、珍しいケースだった。 中津さんは、H氏と、英語教育団体主催 のシンポジウムで、お互いにゲストとし て顔を合わせた。その時、H氏は四十代 前半で、アメリカ風に明るい社交的な感 じの男性だった。 だが、ときおり非常に些末なことで不満 を口に出し、アメリカ仕込みの英語で、 文句を言いつのって周囲の人々を困惑さ せた。 シンポジウムの参加者の大部分が日本人 である場合は、使用語は日本語であるの が常識だが、H氏は委細かまわず英語で 押し通し、相手の英語が下手な場合は遠 慮なく修正した。 逆に、英語が上手な相手にはニコニコと 愛想よく接するので、結果として大勢の 顰蹙を買ったが本人は平然としていた。
心の中の底なし不安感
H氏は、アメリカンスクールを出るとす ぐにアメリカ国内の大学に進学し、東京 で自宰の教育教室を開いていた。 中津さんは、H氏を観察しているうちに、 彼の心の中に底なしの「不安感」をみて とった。 四十歳の大人であるはずの彼は、日本に 戻ったとたんに本能的に十二、三歳の昔 に戻り、当時、彼が直面した「英語のカ ベ」に向かって石のように緊張した。八 方ふさがりの不満と不安をかかえて、毎 日、しのいでいた少年に戻っていた。 当時は、そこから抜け出すために、英語 を徹底的に習得し、英語をモノにしたが、 「心」の安定までには至らず、成熟も出 来なっかのではなかろうか。 彼がしばしば見せる、他人への不寛容さ や、幼稚なイラツキ、不満は、かっての 自分への怒りが未消化のまま積み重なっ て大きな不安定を作ってしまっているよ うだ。 それは、彼自身が何者であるのか、また は何者であるべきかが分からない漠然と した「宙吊り状態」のなかに置かれてい るのではないか。
低学年丸投げ型英語教育の危険
中津さんの推察と想像では、H氏の場合、 子供の成熟のための両親のバックアップ が不足していたのではないかと思う。 世間では、子供が英語を勉強してること 自体が「非常にいいこと」であり、「子 供の成長に役立つこと」と信じて疑わな いようだ。 しかし、現実の子供にとっての「人とし ての成熟」に役立つ言葉は、親からいろ いろと、時々は、うるさくかまわれる関 係の中でしか生まれないのではないか。 英語を低学年のうちに仕込んでおけばい いと、芸を仕込むように手軽に考える人 々が、「手抜き丸投げ型英語教育」に走 るのであろうが、人間の「成長」と「成 熟」は、親や大人の「丸投げ」からは、 得られるものではなく「底なし不安」し か残さない。中津燎子さんの結論である。 (続く) (N80-4)
英語と運命―つきあい続けて日が暮れて

英語と運命―つきあい続けて日が暮れて

<目次> プロローグ 好奇の虫 第1章 初期の音 第2章 九十平とウメ 第3章 不協和音ブルース三代記 第4章 ボルシチ語とみそ汁語 第5章 メシの種 第6章 朝鮮動乱と英語 第7章 秘訣は「WHY?」と「BECAUSE」 第8章 通訳の限界は皮膚下3糎か5糎 第9章 二人の神父と四人のボランティア 第10章 アメリカン・ドリーム 第11章 アメリカン「悪夢」 第12章 未来塾とヒグマ・ザ・モンスター 第13章 英語と日本人に関わる深い谷 第14章 無責任桃源郷 第15章 一トン爆弾と戦陣訓と東条英機 第16章 理想の英語学習プラン エピローグ 河内の里の最後のクラス
◇洒落ているなサイト◇
ディズニー 公式HP http://home.disney.co.jp/
≫平成万葉集
何者か見えぬ相手とパソコンの将棋をさして負けて苛立つ
井上武司(71歳)埼玉県 平成万葉集
<世界のホテル>
Amazing view from ResortQuest Waikiki Beach Hotel (Now Called Aston Waikiki Beach Hotel) :