武器しての英語力を考える

『英語と運命(5)』第16章 理想の英語学習プラン(1)

<estelの記録帳 東京の夜景 ピンクリボンカラーを横目に>
シンガポールの小学校授業見学
中国や東南アジアの国々には「武器とし ての英語力」の必要に気付き、早くから その意味での英語教育に力を入れている。 中津燎子さんは、シンガポールでは小学 入学と同時に英語で授業を始めるという 話を耳にして、苦労の末、1993年2月に、 その授業を見学する機会を得た。 教室では英語で一年生の児童たちに「私 の何前は云々」と自己紹介を教え込んで いた。三十人ほどのクラスのほとんどは、 福建省広東省出身の親と共にシンガポ ールに来た子供たちで、他数人のインド、 エジフト、トルコ系の子供たちがいた。 どの子供も家庭では、親の言葉で暮らし、 英語は学校用語でしかない。だから一年 生のクラスは全く英語になじんでいない のが丸見えだった。そのぶん教師の苦労 はふつうの一年生クラスの五倍増である。 私が見学したクラスの先生は、二十四、 五歳の女性教師の二人だった。 彼女らは、中国系らしかったが、英語以 外の言葉を口にしなかった。子供が理解 出来る程度の単純な筋書きで、「自己紹 介」を題材にしたコントを二人でやるの だが、苦心惨憺、汗が飛びちるほどの大 熱演をやっても、子供たちの反応は芳し くない。 「私の名前は……」という言葉の概念が いくらかでも出来ている子供と、まだ幼 くてどうにもならない子供の差が、もっ と、開いてくる。 しかし、三つ目のコントの半ばで、理解 の早い子が、指で自分の名札を指して、 「マイ ネーム イズ……」とやり始め ると、他の子供も、それに従って唱和し はじめた。 四十五分の授業の最後の終了間際で、や っと子供たち全員が確かな納得で、名札 を指差して「マイ ネーム イズ……」 とそれそれの名前を口にした時、先生た ちは、汗を拭きながら、コップの水を飲 みほしていた。
日本人生徒の外国と外国語嫌い
次に、五年生の理科の実験に取り組んで いるクラスを見学した。生徒たちは、ふ つうに中国系の先生から英語で授業を受 けていた。 格別、流暢でもなく、かと言ってぎこち ない英語表現でもないが安定した正確な 英語が使われていた。ただ、どうしても 中国語なまりへの傾斜が強いのは、自然 の成り行きだと思われた。 翌日、今度は、友人の紹介で日本人学校 を訪問する機会を得たが、授業の見学で はなく、日本人学校の英語講師として勤 務しているインド系の女性と話をする約 束であった。 シンガポール日本人学校はたいへん大規 模で、生徒数三千人近く、教師数も多く、 英語担当者だけでも十人。校庭の隣りに ある駐車場には、さまざまな地域(たと えばマレーシア)から生徒を運んでくる 大型の送迎バスが二十台ほど並んでいる 光景は壮観であった。 二十分ほどの短い面会で、彼女が、ぜひ 答えを聞かして欲しいと望んだ質問は次 の一つだった。 「どうして、日本人生徒は英語を学習す ることを嫌うのか」。 授業内容は、あいさつを含めた中程度の 英会話が主体で、シンガポールの日常生 活に欠かせないから、もう少し真剣に勉 強して欲しいのに、関心を、殆ど示さな いのが不思議でしょうがないと。 その他、次から次へと彼女が奇妙だと思 っている日本人の生徒たちの言動を並び 立てた。 それら答えは中津燎子さんの見るところ、 ただ一つしかない。 子供たちは、純粋に「外国と外国語嫌い」 になってしまっているらしいのだ。 (続く) (N78-4)
英語と運命―つきあい続けて日が暮れて

英語と運命―つきあい続けて日が暮れて

<目次> プロローグ 好奇の虫 第1章 初期の音 第2章 九十平とウメ 第3章 不協和音ブルース三代記 第4章 ボルシチ語とみそ汁語 第5章 メシの種 第6章 朝鮮動乱と英語 第7章 秘訣は「WHY?」と「BECAUSE」 第8章 通訳の限界は皮膚下3糎か5糎 第9章 二人の神父と四人のボランティア 第10章 アメリカン・ドリーム 第11章 アメリカン「悪夢」 第12章 未来塾とヒグマ・ザ・モンスター 第13章 英語と日本人に関わる深い谷 第14章 無責任桃源郷 第15章 一トン爆弾と戦陣訓と東条英機 第16章 理想の英語学習プラン エピローグ 河内の里の最後のクラス
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