満州事変と日中戦争 日本切腹、中国介錯論
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(6)
<estelの記録帳 横浜周辺 鋼のキリン>
起こされた満州事変と起きた日中戦争
満州事変と日中戦争の頃になると、関連 する知識の断片がたまっているので、語 られている世界がヴィヴィットに立ち上 がってきます。1000ピースほどもあろう ジグゾーパズルの断片を丹念に組み立て ていく楽しさがあります。 また、この本は、中高生を対象にした講 義をまとめたものなので、事の成り行き を、手を変え品を変え説明していて、理 解が十分過ぎるほど深まります。 満州事変は、1931年(昭和6年)九月十 八日、関東軍参謀の謀略によって”起こ された”もの、日中戦争の方は、1937年 (昭和12年)七月七日、小さな武力衝突 をきかっけとして”起きたもの”、とし て、講義が進められていきます。 石原莞爾、南満州鉄道、奉天、張学良、 將介石、東三省、盧溝橋事件、満蒙、内 蒙古、清朝、中華民国、討匪戦、リット ン調査団、松岡洋介、幣原喜重郎、浜口 雄幸、林銑十郎、犬飼毅、吉野作造、内 田康哉、斎藤実、連盟規約第16条等々。 如何でしょうか。ご自身でジグゾ―パズ ルを組み立てて見ませんか。こんなに、 やり甲斐のあるクイズはそうありません。湖適の「日本切腹、中国介錯論」
中国側は、この戦争をどう見ていたか。 その中で、將介石が率いるの中国国民 政府の外交官である湖適の「日本切腹、 中国介錯論」がすごいです。 <中国は絶大な犠牲を決心しなければな らない。この絶大な犠牲の限界を考える にあたり、次の三つを覚悟しなければな らない。 第一に、中国沿岸の港湾や長江の下流地 域がすべて占領される。 第二に、河北、山東、チャハル、綏遠、 山西、河南、といった諸省は陥落し、占 領される。そのためには敵国は陸軍を大 動員しなければならない。 第三に、長江が封鎖され、財政が崩壊し、 天津、上海も占領される。そのためには、 日本は欧米と直接衝突しなければいけな い。我々はこのような困難な状況下にお かれても、一切顧みないで、苦戦を堅持 していれば、二、三年以内に次の結果が 期待できるだろう。[中略] 満州に進駐した日本軍が西方や南方に移 動しなければならなくなり、ソ連はつけ 込む機会が来たと判断する。世界中の人 が中国に同情する。英米および香港、フ ィリピンが切迫した脅威を感じ、極東に おける居留民と利益を守ろうと、英米は 軍艦を派遣せざるをえなくなる。太平洋 の海戦がそれによって迫ってくる。> 「世界化する戦争と「中国の国際的解決」戦略」 石田憲編『膨張する帝国 拡散する帝国』所収 (東京大学出版会) これは、1935年(昭和10年)時点での予 測であります。そして、最終的は、日本 の切腹を中国が介錯するのだ、というの です。(続く) (N68-4)<目次> 序章 日本近現代史を考える 1章 日清戦争 ―「侵略・被侵略」では見えてこないもの 2章 日露戦争 ―朝鮮か満州か、それが問題 3章 第一次世界大戦 ―日本が抱いた主観的な挫折
- 作者: 加藤陽子
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2009/07/29
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