『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』

加藤陽子さんが高校生に語りました

<estelの記録帳 赤レンガ倉庫 より赤く>
戦争を見てきたように語る
加藤陽子さんの、誠実な執筆姿勢に心を 打たれました。「戦争」を語るとき、人 は、どうしても、感情が昂ぶります。加 藤さんは、カイコが糸をつぐむように、 ゆっくりと、日清戦争日露戦争、第一 次世界大戦、満州事変と日中戦争、太平 洋戦争を、一つひとつ丁寧に見極めてい きます。まるで、戦争を見てきたように 語っています。 2007年末から翌年のお正月にかけて五日 間、神奈川県の私立・栄光学園中学校の 三年生、栄光学園高等学校一年生、二年 生の一七名にレクチャーした講義をもと に序章から5章までで構成されています。 高校生どころか、国の指導的な立場にあ る人たちには、ぜひ、読んでいいただき たい。
戦死者の死に場所を教えられない国
戦争の残忍さは、どこでも、有史以来変 わりません。しかし、霊魂、慰霊になっ てまで、無残に扱われている国には、怒 りが彷彿と湧きあがってきます。 日本人はドイツ人にくらべて、第二次世 界大戦に対する反省が少ないと、よくい われることです。真珠湾攻撃奇襲で、日 曜日の朝、まだ寝床にいたアメリカの若 者三千人規模で殺していることになるの でので、大変な加害者であることは明白 です。 日中戦争、太平洋戦争のおける中国の犠 牲者は、諸説ありますが、中国の統計で は、軍人の戦死傷者約三三〇万人、民間 人の死傷者約八〇〇万人としています。 さらに、台湾、朝鮮、南洋諸島などにお ける地域の人々に強いた労苦も忘れてい けない。 国家総動員法に基づく国民徴用令によっ て、植民地からも日本国内の炭坑、飛行 場建設などに動員された多くの労働者た ち。朝鮮を例にとれば、四四年まで朝鮮 の人口16%が、朝鮮半島の外へ動員され ていた計算になるといいます。
四四年から一年半で九割の戦死者を出す
加藤陽子さんは冷静に考えます。日本の 場合、加害の立場を忘れて、受身のかた ち、つまり「被害者」という立場を、な ぜ国民がそう選んだのか、の理由を掘り 下げます。 日本は、四四年から敗戦までの一年半の 間に、九割の戦死者を出して、そして、 その九割の戦死者は、遠い戦場で亡くな っています。 日本という国は、こうして死んでいった 兵士の家族に、彼がどこでいつ死んだの か教えることのできなかった国でした。 この処遇は、現代の我々からすれば、理 解しがたい慰霊への接し方です。 日本古来の慰霊の考え方では、未婚のま ま子孫を残すことなく郷土から離れて異 郷で人知れず非業の死を遂げると、魂は” たたる”と考えられていました。
遺骨を放棄、天理にもとる
ある遺族が国の役所に戦後になってから 書いた手紙が残っていて、その父親が書 いています。「山中に置き去りにされた 愛子(いとしご)を救出せざれば親とし て相済まざる次第であり、かつ天理にも とる次第」。 レイテでもガダルカナルでも、山中で死 んだ自分の愛しい息子の骨を拾ってやら なければ、親として気が済まない。また、 息子の骨を拾ってやれないとおいのは、 天の道理に反することであると、書いて いるわけです。 本屋さんに行きますと、「大嘘」、「二 度と謝らないための」云々といった刺激 的な言葉を書名に冠した近現代史の読み 物が積まれているのを目にします。地理 的にも歴史的にも日本と関係の深い中国 や韓国と日本を論じたものにこのような 刺激的な惹句のものが少なくありません。 しかし、このような本を読み一時的に溜 飲を下げても、結局のところ、「あの戦 争はなんだったのか」式の本に手を伸ば し続けることになりそうです。 もう、ここいらで、時間とお金の無駄遣 いをやめたいものです。<続く> (N63-4)
それでも、日本人は「戦争」を選んだ

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

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映画『ドロップ』公式サイト http://www.drop-movie.jp/
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