鳩山首相外交デビューと歴史問題 - 一日一尺一寸　本屋の小僧

新民主党政権は、歴史問題で躓かないでくだ
さい。

鳩山由紀夫首相は、来週からいよいよ外交デ
ビューする。米ニューヨークで開かれる国連
気候変動ハイレベル会合や国連総会一般演説
など一連の国際会議で外交スケジュールをこ
なす。

オバマ米大統領はじめ、ロシア、中国、韓国
など主要国の首脳との個別会談も予定されて
いる。中国は胡錦濤国家主席と鳩山首相との
会談を通じ、首脳レベルでの信頼関係を構築
していきたい考えをのぞかせている。鳩山首
相の中国初訪問は、１０月中旬の開催が検討
されている日中韓首脳会談で実現する可能性
が高い。

温家宝首相は１６日、鳩山首相に祝電を送り、
「双方が共に努力し、（両国の）戦略的互恵
関係が新たな歴史のスタートラインに立って
一層大きく発展するよう推し進めることを希
望している」と伝えた。

韓国の李明博（イミョンバク）大統領は「ア
ジア重視」を掲げる鳩山政権誕生で「韓日関
係飛躍を期待する」と期待感を表明している。
歴史問題について、韓国の各メディアは「自
民党より柔軟な姿勢を示すのではないか」と
鳩山政権が新対応を示すのでは期待している。

歴史問題については、相手国から言われまで
もなく、新民主党鳩山由紀夫政権は、確固た
る方針で対応して頂きたい。歴史問題は厄介
だが、もう、逃げ回ってはいられないだろう。

佐谷眞木人氏の自問、”私たちは、いつから
「日本人」になったのだろうか”から『日清
戦争─「国民」の誕生』(講談社現代新書)」
が、上梓された。

日清戦争は、二つの意味で、近代の日本が経
験した他の戦争とは、大きく異なる戦争であ
った。一つは、この戦争を境にして日本社会
のありかたが大きく変化したことである。日
清戦争の前と後では、社会の見えかたがすっ
かり変わってしまった。ひとことで言うなら、
日清戦争が「国民」を生んだということにな
る。日清戦争を共通体験として、日本は近代
的な国民国家へと脱皮したのである。

もう一つは、この戦争が、東アジアの国際秩
序を大きく揺るがした点にある。日清戦争を
契機として、日本のナショナリズムは中国大
陸に伝播し、やがて東アジア全体へと波及し
ていくことになる。そしてその影響は、今日
に及んでいる。

日清戦争には複雑な二重性がある。

日本は戦争によって周辺国に与えた甚大な被
害と同じ程度に、日本が周辺国から理想化さ
れたことも重大な意義をもつことも無視はで
きない.日清戦争の結果、東アジアには日本と
いう規範が成立した。そして、周辺国はこぞ
って、日本のような国にあることをめざした
のである。そこに、日清戦争の世界史的意義
がある。

日清戦争の後、日本と清との人的交流は以前
に増して盛んになり、清からは、年に一万人
近くの留学生が日本に来た。彼らは近代的な
国民国家となった日本に学び、ナショナリズ
ムを母国へもち帰った。

その中に、のちに中国の革命の父と称される
孫文もいた。

佐谷眞木人氏：
1962年大阪市生まれ。慶應義塾大学文学部卒。
同大学大学院文学研究科博士課程単位取得。
博士（文学）。専攻は国文学。現在、恵泉女
学園大学人文学部准教授。

＜目次＞
はじめに歴史の断層
第1章征韓論ふたたび
第2章戦争はどう伝えられたか
第3章死んでもラッパを口から離しませんでした
第4章川上音二郎の日清戦争
第5章熱狂する人びと、祝捷の空間
第6章遊戯・学校・軍隊
第7章死者のゆくえ、日本の位置
むすびにナショナリズムのねじれ
（Ｎ40−2）