不合理が我がもの顔で罷り通る日本軍

衆院選の最中、「陸海軍戦史に学ぶ負ける織
と日本人」(集英社新書)を読んで悲しくなる。

日本人特有の性癖は、戦時には、より顕著に
見えてくる。このたびの第45回衆院選も一つ
の戦さである以上、人間丸出しの姿を見せて
くれた。特に、小泉政権後の自民党は、ひた
すらに墓穴を掘ってきた。安部晋三、福田康
夫、麻生太郎3首相の政権のたらい回しは、
決定的な信用失墜を招いた。麻生太郎に至っ
ては、その墓穴の堀り方には、悲哀さえ感じ
てしまう。 

本書本は、陸海軍戦史を語っていて、ただの
戦史の本ではなく、集団としての日本人の自
画像を如実に描いてみせる。

指揮官不在の国日本の集団組織はなぜ歴史を
生かせないのか。日本は世界第四位の軍事大
国といわてれいる。しかしそれは、軍事予算、
装備の質と量を意味するだけで、本当の軍事
力をさすものではない。組織としての危機管
理能力、指揮系統の柔軟性と迅速性が備わっ
ていなければ、ただの飾りものに過ぎない。

戦前の陸軍、海軍の作戦行動の欠点を組織論
という観点から明らかにし、今日につづく集
団としての日本と日本人の問題点を焙りだし
てくれる。

第1章 戦争に求められる季節感
第2章 社会階層を否定した軍隊
第3章 戦う集団にあるべき人事
第4章 誤解された「経済」の観念
第5章 際限なき戦線の拡大
第6章 情報で負けたという神話
第7章 陸海軍の統合ができない風土

第7章から。<<<
輸送用とはいうものの、陸軍がまったく独力
で潜水艦を設計、建造して、陸軍の手だけで
運用していたという国は日本だけだろう。ま
た今日でいうドッグ型揚陸艦はMT船、上陸
用舟艇は大発(大発動機艇)、小発として、
日本は早くからほぼ完成した形で運用してい
た。それもすべて陸軍が開発したものと聞け
ば、複雑な気持ちにさせられる。その一方で
海軍は、戦車にご執心だった。昭和十八年度、
日本は戦車を七百八十両ほど生産したが、そ
の半数以上は海軍向けであったことは秘めら
れた事実だ。


日本のお役人のDNAは、この流れを組んで
いるのかも知れない。(N22)

陸海軍戦史に学ぶ負ける組織と日本人 (集英社新書 457D)

陸海軍戦史に学ぶ負ける組織と日本人 (集英社新書 457D)