気がつけば卑しく媚を売り、

敗戦後、手のひらを返したような日米親善で、
片言の英語をお世辞のように使って米兵に話
しかけた情けなさ。米軍の補給物資をくすね、
豊かな食糧や日用品に驚愕したみじめさ。あ
れから22年、俊夫は日本の発展ぶりを見せつ
けて、めりけんをぎゃふんと言わせようと必
死になるが、気がつけば卑しく媚を売り、も
てなしに奔走しているのだった。)

これは、野坂昭如著「アメリカひじき」の解
説の一節だ。講師には、ロバート・キャンベ
ル氏。東京大学院総合文化研究科教授、日本
文学担当。専門は江戸時代から明治期の日本
漢詩文で、それをベースに芸術・思想・メデ
ィア論など関心が多岐.ニューヨーク生まれ。

今年4月からは、始まったNHK語学番組
『Jブンガク・英訳で楽しむ日本文学』、
6月19日放送第24回「アメリカひじき」から
の引用である。お相手役には依布サラサさん。
作詞家・歌手。所属レーベルはキューンレコ
ード、所属事務所はSMAエンタテインメント。
東京都出身。父はシンガーソングライターの
井上陽水さん、母は歌手の石川セリさん。

先生役のロバート・キャンベルさんと、生徒
役の依布サラサさんとの、かけあいは絶品。
依布さんの作品への読後感が、いつも、作詞
家らしく、センスに富む。

ナーレーションはクリス・ペプラーさん。
東京都出身のタレント。東京のFM局J-WAVE
ナビゲーター(他ラジオ局のディスクジョッ
キーに相当)として知られる。アメリカ国籍。
父がドイツ系アメリカ人、母が日本人。

日本文学が、グローバルに、ポーンと、投げ
出されたようで、不思議な感じ。

江戸期から、明治、昭和と、作品名は知って
いても、まだ読んだことのない文学作品が、
目白押しに登場してきて、実に楽しい番組で
ある。語学番組であることを忘れてしまうほ
どである。各作品には日本語版トーク版と英
語語り版とがある。

文学と英語好きには堪えられない。「枕の草
紙」「方丈記」「奥の細道」などの、作品中
の有名文章を、英語では、こう、表現するの
かと感心させられる。

野坂 昭如氏略歴。
1930(昭和5)年、神奈川県鎌倉生れ。早大中退。
様々な職を経て、コラムニストとして活躍。63
年の処女小説『エロ事師たち』で、性的主題を
辛辣かつユーモラスに追求、俄然注目される。
67年、占領下の世相に取材した「アメリカひじ
き」、戦争・空襲・焼跡の体験を描いた「火垂
るの墓」を発表。翌年、この両作で直木賞受賞。
(N18)

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)

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読むことの力 (講談社選書メチエ)

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