アメリカのシンボルが又も倒れる

アメリカの出版社リーダーズ・ダイジェスト
・アソシエーションが、8月17日、債務削減
を目的に連邦破産法11条を申請する方針を発
表しました。インターネット普及の影響や、
景気の悪化で広告収入や購読収入が落ち込み、
資金繰りが悪化したと見られています。近年、
アメリカでは伝統ある新聞や、有名な雑誌が
つぎつぎ倒れている最中のビッグニュースで
す。アメリカの栄光がまた一つ消えました。
よしんば立ち直ったとしても、かっての栄光
は、もう、ありません。

主要債権者とは16億ドルの債務の株式化など
で基本合意しており、その上で破産手続きを
取り早期の再建を目指す。現在22億ドルある
負債は再建後に5億5000万ドルまで減らせる
見通しではありますが、連邦破産法11条はは
米国内の事業のみ適用されますので、難題は
簡単には解決されないでしょう。

リーダーズ・ダイジェスト・アソシエーショ
ンは、月刊誌「リーダーズ・ダイジェスト
など94誌を、世界78カ国で出版しています。
リーダーズ・ダイジェスト」日本版は1946
年6月に創刊され、1986年2月まで発行されて
いました。「リーダイ」の略称で親しまれ、
ビジネスマン必須の雑誌でありました。当初
は、ほとんど全体がアメリカ版の翻訳でした
が、1970年代中頃から日本語版オリジナルの
記事が3割ほどまでに増えました。

ダイジェストの誌名が示す通り、アメリカで
のベストセラー本や話題書を簡潔に要約した
記事が多く掲載され、広く浅く情報を仕入
ておくには便利でありました。しかし、知ら
ず知らずのうちに、物事の本質への掘り下げ
をせず、上辺だけをなぞって事足れりと言う
習癖を身につけてしまったように思います。

リーダーズ・ダイジェスト」で思い出され
ること、一つ。1972年に、日本国政府と中華
民共和国政府(中国共産党政府との間に日
中共同声明が出され国交が築かれたことによ
り、日本は、台湾中華民国政府と断交しまし
た。そのころ、所用で台湾と日本を往復して
いましたが、台湾の知人から、日本語版「リ
ーダーズ・ダイジェスト」最新号の持参を、
よく頼まれました。

当時の台湾では、思想統制が厳しく、無制限
に書籍を持ちこめる状況ではありませんでし
た。左翼思想の本は絶対にダメ。風俗関連は
没収。街角には、大書した「大陸反攻」の看
板が、要所ようしょに掲げられていました。
そんな環境下にあって、日本語版「リーダー
ズ・ダイジェスト」だけは、税関も持ち込み
をOKしてくれました。

どんな険悪な状況下にあっても、戦争に訴え
たら破滅です。いま、台湾と中国本土との間
を民間航空機が飛び交っています。夢のよう
です。こんな喜ばしいことはありません。
(N17)

Reader's Digest [US] July 2009 (単号)

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