『狼少女』(監督・深川栄洋)

『狼少女』(監督・深川栄洋

{彼らはただお互いの名前を呼び合うだけ。
  懸命に走りながら、顔を真っ赤にして。

  あきらくん。

  てづかさん。 }
『ネオカル日和』〈著者〉辻村 深月(3)
《2 おおむね本と映画の宝箱》から ◇言葉を奪う、彼らの「秘密」
『狼少女』(監督・深川栄洋

気持ちをまだ言葉にできない十歳の青春

◆◇◆続々・立ち読み失礼◆◇◆

☆佐高 信『原発文化人50人斬り』毎日新聞社☆(47)

▼△第3章 東京電力の歴史と傲慢△▼ (13)
・官吏は人間のクズである(その2)

●郷誠之助「僕らの眼の黒い間は断じて軍部なんぞに迎合しない」

佐藤栄佐久 (著) 『福島原発の真実 』(平凡社新書) ☆

▼△第7章 大停電が来る(6)△▼
・「東京」の本音(その3)

自らの都合を優先し簡単に計画を変更し国民や地域を軽視する官僚

『ネオカル日和』〈著者〉辻村 深月(3)
《2 おおむね本と映画の宝箱》から ◇・言葉を奪う、彼らの「秘密」
『狼少女』(監督・深川栄洋

気持ちをまだ言葉にできない十歳の青春

《「 『狼少女』(監督・深川栄洋 『ごめんなさい。ありがとう。』 それから、大好き。 恋愛に必要な要素はこれに尽きると言ってい い。クライマックスで、それどころか観終え た後までずっと登場人物たちのこの声が聞こ え続けるとしたら、それはもう名作恋愛映画 と言わざるをえない。 しかも、映画のキャッチコピーとして使われ ているこの言葉、実際には作中にほとんど登 場しないのだ。 彼らはただお互いの名前を呼び合うだけ。懸 命に走りながら、顔を真っ赤にして。 あきらくん。 てづかさん。 気持ちを言葉にする、ということをまだ知ら ない十歳の青春は、健気さと不器用さに胸が つまって息がでいないほどだった。 観ている大人である私たちには、呼び合う名 前を通じて雄弁に聞こえる言葉。だけでお互 いにはもどかしいくらい遠い。 何をもって「ミステリー」と呼ぶか。定義は 人それぞれだ。私はよく「『謎』か『トリッ ク』があれば」と答えているが、そこにもう 一つ追加したいのが「秘密」である。 深川監督の映画の登場人物は、しばしばこの 「秘密」を抱えている。それは「過去」と呼 ばれたり、「傷」と呼ばれたり。 そしてその「秘密」はいつも、明かされるた めだけにそこにあるものでない。周囲の人び とがそれをどう受け止め、接し、自分の立場 に置き換えて考えていくか。 彼らの葛藤や窮屈さ、優しさを体現しながら、 観客もまた主人公と一緒にその「秘密」を共 有することになる。 大人に禁じられている見世物小屋の中を見た い、という主人公・明の好奇心。返り道の風 景、土と草の匂い。私はこの場所を知ってい るし、この秘密の感覚に覚えがある。 表現を知るはずの私たち大人でさえ声を失う 瞬間。なんてすごい映画を観たのだろうかと、 ラストはもう、言葉もない。 」》 ◎だれしもが、ほろ苦い思いに胸を締め付け られる十代の日の恋慕。大人はそれを忘れて、 ハートをどこかへ置き忘れて来てしまった。 狼少女 [DVD] 出演: 鈴木卓也, 大野真緒,    増田怜奈, 大塚寧々, 利重剛 監督: 深川栄洋 物語:『紀雄の部屋』の深川栄洋監督による、 小学生3人の心温まる交流を描いたハートフ ルドラマ。小学四年生の大田明;一人で電車 に乗って出かけたり、夜に友達だけで祭に行 ったり、町にやって来た見せ物小屋に興味津 々の男の子。手塚留美子;都会からの転校生、 彼女は頭も良く容姿端麗でオシャレ、あっと いう間にクラスメイトから一目置かれる存在。 そして、いじめられっ子の秀子はある出来事 をきっかけに3人が交流を深めていく。 「三丁目の夕日」のように、昭和の古きよき 時代が描かれ、観た後、何日も感動的シーン が浮かんでくる佳作。
植村花菜 『melody』2005年公開の『狼少女』主題歌
(kaeruiwa1963 さんが 2010/12/28 にアップロード) 《「 この曲は「トイレの神様」でブレイクしてい る植村花菜さんの初期の名曲で、2005年 9月7日に発売されました「ミルクティー」 という曲のマキシシングルのCDの中に、 カ-ップリング曲として収録されていました。 (CD番号:KICM-1145) 同年12月に公開されました「狼少女」 (監督:深川栄洋)の中でも主題歌として 使われていた曲です。 この「狼少女」という映画はタイトルだけを 聞くと、何やら恐怖映画のような感じもする んですが、実際にはそのような映画ではなく て、懐かしい昭和の時代に生きている子供た ちの姿を、とても温かい眼差しで描いている、 深川栄洋監督による心温まる素敵な感動作な んです。植村花菜さんが歌っているこの映画 の主題歌も、ピッタリと映画の中の世界観に ハマっていましたので「狼少女」の映画につ いても是非一度、DVDなどでご覧になって みて下さ-い。 (DVD番号:PCBE-52504)  (つづく) (Y182-75)

『ネオカル日和』

単行本: 280ページ 出版社: 毎日新聞社 (2011/11/25) 《待望の初エッセイ集! 大好きがいっぱい! 【ネオカルチャー】辻村深月が独断と偏愛で選ぶ日本の 〈今〉を象徴する、おもしろいもの、かわいいもの、お  いしいもの、ヘンなもの、そんなものぜんぶ。  国民的マンガからパワースポットまで、“ネオカル”  の現場を人気ミステリー作家が潜入!辻村深月のマニ  アックなこだわりとキュートでトホホな日常を綴る初  ルポ&エッセイ集》〔表紙帯から〕 〔目次〕 1 ネオカルチャー新発見  (支えは藤子・F・不二雄さんの人格 ドラえもん  レッツ・のう能!のうのう能 ほか) 2 おおむね本と映画の宝箱  (私をまっすぐ映すものオマージュのための ショートストーリー&エッセイ ほか) 3 四次元の世界へ  (あしたも、ともだち世界で一番好きなラブ ストーリー『パーマン』 ほか) 4 特別収録 ショートショート&短編小説  (彼女のいた場所写真選び ほか) 5 女子とトホホと、そんな日々  (a day in my life 私をハイにする…― ウッカリショッピング ほか) 〔著者〕 ☆辻村 深月(つじむら・みづき)☆ 一九八〇年ニ月ニ十九日生まれ。山梨県出身。千葉大学 教育学部卒業。二〇〇四年に『冷たい校舎の時は止まる』 で第三十一回メフィスト賞を受賞しデビュー。二〇一一 年『ツナグ』で第三十ニ回吉川英治文学新人賞受賞。他 の著作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』 『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』 『名前探しの放課後』『ロードムービー』『ゼロ、ハチ、 ゼロ、ナナ。』(第一四ニ回直木賞候補作)『V.T.R.』 『光待つ場所へ』(以上、講談社)、『ふちなしのかが み』『本日は大安なり』(以上、角川書店)、『オーダ ーメイド殺人クラブ』(集英社)『太陽の坐る場所』 『水底フェスタ』(以上、文藝春秋)など多数。新作の 度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者 からの熱い支持を得ています。

『ネオカル日和』〈著者〉辻村 深月(3)

◆◇◆続々・立ち読み失礼◆◇◆

☆佐高 信『原発文化人50人斬り』毎日新聞社☆(47)

原発安全神話を捏造してきたのは誰か!   政財界、メディアと御用学者とタレント文化人  ――原発翼賛体制のすべてを暴き、フクシマの  惨事を招いた者たちを、怒りをこめて告発する》  (表紙帯から)
▼△第3章 東京電力の歴史と傲慢△▼ (13)
・官吏は人間のクズである(その2)

●郷誠之助「僕らの眼の黒い間は断じて軍部なんぞに迎合しない」

《「――一現職大臣の来訪を受けながら、お掛けなさいとも言わず に、まず用件を確かめ、電力問題なら問答無用、お帰り下さいとい う郷に、矢吹はさすがと思う。 「仕方がありません。それでは帰りましょう」 温厚な滝は、こう言った。 「やっぱり電力問題だったのですか。それじゃまことに失礼だが先 程も申したようなことで、今日は、お目にかからなかった、おいで を頂かなかったということでお引き取り頂きましょう」 郷の言葉である。 滝に「お引き取り」を願った後、郷は案内役の矢吹に、ちょっと、 と声をかけた。 「この話は、私の遺言のつもりで、聞いてもらいたい。君も知って の通り、昨年のニ・ニ六事件以来、財界人の間に狼狽の風が起こっ て、殺されそうもない連中までが、いまにも殺されそうなかっこう をして慌てているし、時局便乗で、軍におっべかを言ったり、まこ とに見苦しい限りだ。 なかでも僕が一番腹に据えかねているのが全産連(全国産業団体連 合会=現在の日経連の前身)の態度であり、わけても藤原銀次郎君 の声明だ。 いわゆる「財界も方向転換する必要」があるというのだが、これは 言語道断のことだよ。 財界は、昔も今も、またこれからも、少しも方向転換などする必要 はない。もしも方向転換をする必要があるとすれば、それは藤原君 自身のことで、あの男は頭が良くないから、金魚鉢の金魚のように、 ぐるぐる回って、何遍でも鼻を壁にぶつけては、転換するんだろう が、日本の財界は、まだ藤原なんぞに代表されているもんじゃない。 三菱の岩崎と、三井の池田(成彬)とも、このことでいま話し合っ ている最中だが、僕らの眼の黒い間は断じて軍部なんぞに迎合した り、方向転換なんぞしないから、判断を間違わぬようにしてもらわ んと困る」――》 原発文化人50人斬り ◎名画の一場面のよう。僕の生まれた時には、こんな立派な人が、 居たんだと思うと感無量。あれから、何十年………。 ///////////////////////////////////////////////////////////
◆◇◆立ち読みのはしご◆◇◆

佐藤栄佐久 (著) 『福島原発の真実 』(平凡社新書) ☆

《国が操る「原発全体主義政策」の病根を知り尽くした  前知事がそのすべてを告発》(表紙帯から)
▼△第7章 大停電が来る(6)△▼
・「東京」の本音(その3)

自らの都合を優先し簡単に計画を変更し国民や地域を軽視する官僚

《「――五月(2003年)ニ三日には、双葉郡の町村で組織する 「双葉地方エネルギー政策推進協議会」から、県内一〇基の原発が停 止していることに対し、「異常事態からの脱却を期待している」との 要望書が県に届いた。 その一方で、東京をはじめ、電気を消費する都会地でも、立ち止まっ て考える機運はまったく生まれなかった。 そこで、『朝日新聞』に福島県の考え方を投稿、五月ニ四日付の「私 の視点」欄に、「核燃料サイクル立ち止まり国民的議論を」というタ イトルで掲載された。 東電の原発が停止することになった経緯についての反省もなく、相変 わらず核燃料サイクルを唱える国の原発力政策について、歴史をさか のぼって検証して批判、それまでの経緯を簡単にまとめた上で、 「いったん決めた方針は、国民や立地地域の意向はどうであれ国家的 な見地から一切変えないとする一方、自らの都合を優先、簡単に計画 を変更するという国民や地域を軽視した進め方である」と強く避難し、 「今、本音で議論することが必要」と強く求めた。――》 福島原発の真実 (平凡社新書) ◎このとき、「東京」は、この福島からのアピールを黙殺しました。

≪都会歳時記≫

[都市・現代の視座1000句]句集 古家 元「文學の森」刊]
〔春〕時候  戦没者墓苑余寒の人の影
http://shop.bungak.com/products/detail.php?product_id=143

≫平成万葉集

読売新聞社 (編集)、「万葉のこころを未来へ」推進委員会 (編集)
声へ声掛けあい近江の農民ら鯉のぼりの下の田へ水を引く
黒田多恵子(68歳)神奈川県

◆◇◆悪魔の辞典より◆◇◆

アンブローズ ビアス (著)、Ambrose Bierce (原著)、 西川 正身 (翻訳)
後世(posterity n.)
ある流行作家に対する同時代の人びとの判決を くつがえす上訴裁判所のことだが、そのさい上 訴人はその作家の競争相手であった無名の作家。 新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)

☆★☆言えそうで言えない英会話表現☆★☆

これはアレルギーで、風邪じゃないの。
This is an allergy, not a cold.
<NHKラジオ 「英語5分間トレーニング」岩村圭南 講師>

◎◆◎アートのたのしみ《英国篇》◎◆◎

G. F.ワッツ“Lady Margaret Beaumont & her Daughter”
1862年・個人蔵) ◇ジョージ・フレデリック・ワッツ (George Frederic Watts,1817年2月23日 - 1904年7月1日) イギリスの肖像画家、寓意画家、彫刻家。ラファエル前派・象徴主義。 愛と生、死をテーマに寓意画を描き、肖像画も多く残しました。ワッツ は、もともとも肖像画家で有名でしたが、象徴性によってラファエル前 派に通じ、甘美な抒情性と象徴性のある作品によって、19世紀後半 (ヴィクトリア朝時代)、イギリスを代表する画家となりました。 1867年にロイヤルアカデミーの正会員に。准男爵への推挙を2度も断る。 87歳で生涯を閉じました。 “自画像”(1864年・テイトギャラリー、ロンドン)
George Frederick Watts - Paintings (1 of 3)〈作品紹介〉
(joshje777 さんが 2009/07/06 にアップロード) 【http://www.wattsgallery.org.uk/  http://en.wikipedia.org/wiki/George_Frederic_Watts】  ・Music : Stars of the Lid - Don't Bother They're Here ◎ここでBGMに使用されている“Stars of the Lid”の “Don't Bother They're Here”は不思議な音楽です。  銀河系の遙か彼方で魂が浮遊している感じ。こういうの  を癒し系というのでしょうか。
Don't Bother They're Here (Stars of the Lid)
(DroneBasedMusic さんが 2010/02/01 にアップロード)