『ロンドンはやめられない』(6)
〈著者〉高月 園子(たかつき そのこ)
〔・子供の成功を恐れる親たち〕
・子供が間違って大学へ行ったら、困る
・毎日怒鳴り合い喧嘩をしながら暮らす、幸せ
『ロンドンはやめられない』(6)
「子供の成功を恐れる親たち」の章を最
後まで読んで、その意味するところがよ
くわかりました。
たとえ娘が一五歳で妊娠し、一六歳で出
産、一七歳で結婚、一九歳で離婚。二五
歳ですでに父親の違う三人の子を抱えた
シングル・マザーを、家族全員で育児に
当たるといいます。
その家族の絆の温もりが、押し寄せる波
にように伝わってきます。すごいなあ。
階級アップをがむしゃらに希求すること
なく、与えられた条件のなかで、家族が
助け合って生きてゆく。なにか、懐かし
い光景です。
それだけ、イギリスにおける階級社会の
仕組みが、がっちりしているということ
ではありますが。そこが一億聡上昇志向
の国とは違うところです。どちらが、よ
り幸せかはわかりませんけれど。
また、階級による言葉遣いの違いの問題
も出てきました。
「ピカリング大佐は私をレディとして扱
ってくれましたので、彼に対しては、私
はいつでもレディでいられましたけれど
も、ヒギンズ教授は今でも私を花売り娘
としてしか扱ってくれませんでしたので、
彼に対してはいつまでも花売り娘のまま
です」。
これは、『
マイ・フェア・レディ』のイ
ライザの台詞です。階級社会の厳しい現
実が見えてきます。
いくら、イライザが、
コックニー訛りを
“The Rain In Spain を歌って矯正した
としても、ヒギンズ教授からすれば、彼
女は実験台にしか過ぎないのです。
生きることの悲しさが残ります。
子供が間違って大学へ行ったら、困る
「
彼らがなぜ自分の子供が賢くなるのがい
やかというと、
(1)自分たちがその昔、イレブン・プ
ラス(六十年に廃止された、一一
歳で受ける選抜試験)にあえなく
落ちて入れなかったグラマースク
ール(公立選抜校。今も地区によ
っては残っている)に、もし子供
が合格して入ることにでもなれば、
ミドル・クラスの子供たちと交流
し出すのではないか。
そうなると、インテリのミドル・
クラスの親たちと付き合わなくて
はならなくなるのではないか。あ
ー、めんどうくさい。考えただけ
でもぞっとする。
(2)間違って大学へ行ったりしたら、
子供が違う階級の人間になり、自
分たちとは違うアクセントで話し
出すのではないか。あー、気持ち
悪い。
(3)そうなると、『タイムズ』紙や、
『ガーディアン』紙など、難しい
言葉で書かれた全国紙を読み始め、
『サン』や『ミラー』などタブロ
イドしか読まない(読めない)自
分たちとは、話が合わなくなくな
るのではないかという恐怖の他に、
(4)かって自分も勉学に励んで階級ア
ップを夢み挫折した経験があり、
子供に同じ落胆を味わせたくない。
(5)子供が自分のできなかったことが
できるいうになると嫉妬を感じる。
――など、なかなか複雑な感情があるよ
うです。
毎日怒鳴り合い喧嘩をしながら暮らす、幸せ
当然、彼らの女の子に対する態度は、極
端なまでのアンチ・
フェミニズムかつア
ンチ・キャリア。
一昔前の日本の“家事手伝え”じゃない
けれれど、ワーキング・クラスには定職
を持たずにぶらぶらしている娘がやたら
多いのです
ミドル・クラスの女の子たちがキャリア
志向で、人生に対し男の子以上に野心が
あるのとは対照的。
上流階級(アッパー・クラス)になると
また、ぶらぶら娘やぶらぶら息子が増え
るのですが、それもまた、イギリスでは、
アッパー・クラスとワーキング・クラス
がメンタリティ的に近いといわれる所以
でしょう。
アンチ・アチーブメント派の家庭では、
たとえ娘が一五歳で妊娠し、一六歳で出
産、一七歳で結婚、一九歳で離婚。二五
歳ですでに父親の違う三人の子を抱えた
シングル・マザー、仕事もせず母子手当
で生活という羽目になっても、温かく理
解を示し、家族全員で育児に当たります。
そして、一家の伝統を守ってきっちり中
学を中退し失業中の息子たちや、祖父母、
おじ・おば、いとこも含め、一族郎党が
徒歩圏内に住んで、毎日怒鳴り合いの喧
嘩をしながら、わいわいがやがや暮らす、
というのが、彼らの一つの幸せの形なの
です。
まさにBBCの人気連続大衆ドラマ「イ
ースト・エンダーズ」の世界です。
子供の優秀さが何より自慢で、最低でも
親を越えてほしい、できるなら大成功し
てほしいと願う私たち日本人とは、つく
づく、べつの星の人たちのようですね。
」
〔・子供の成功を恐れる親たち〕了
(続く)
(M70-24)
『ロンドンはやめられない』(6)
高月 園子さん:
東京女子大学文理学部史学科卒業。
英米文学翻訳家。翻訳のほかに、
音楽関係の記事や、20年以上にわたるロンドン生活を題材にしたエ
ッセイを執筆している。
主な訳書に、ラトレル&ロビンソン『アフガン、たった一人の生還』、
スチュワート『戦禍の
アフガニスタンを犬と歩く』、デュ・プレ姉
弟『風のジャクリーヌ』、スミス『めぐり逢う時はふたたび』、ア
ヴィーソン『スプーン三杯の嫉妬』、
ベッカム&ワット『
ベッカム
:マイ・サイド』などがある。
『ロンドンはやめられない 』 (新潮文庫)
文庫: 301ページ
出版社: 新潮社 (2010/8/28)
クリスマスが嫌いで、ゴシップ大好き。親は子供の成功を恐れ、
物欲がなさそうでダイヤには目がくらむ。在英25年の駐在員夫
人が明かす紳士淑女の実態は、品がいいのか悪いのか。イギリ
ス式子育て、人生を狂わされる駐在員たち、海外生活ならでは
の失敗談など、おかしくも愛おしい珠玉のエッセイにちりばめ
られた幸せの秘訣。
<目次>
・私様の教養コレクション
・子供の成功を恐れる親たち
・ロンドンで成金ウォッチング
・イギリス式不完全主義
・イギリス人はクリスマスがお嫌い
・大学入試はユーモアで制覇?
・GUPの法則
・コーヒー・モーニング発、ランチ経由、
ディナー・パーティ行き
・男と女のケミストリー〔ほか〕
以上
My Fair Lady - The Rain In Spain
イーストエンダーズ(EastEnders)は、
BBCで放送されている連続テレビ
ドラマである。タイトルの由来でもある“
イーストエンド”とも呼ばれる
ロンドン東部の架空の町、ウォルフォード(Walford)を舞台とした作品で
あり、1985年2月19日に放送を開始した。オープニングとエンディングで
は舞台となるロンドン東部(ドックランドや
テムズ川下流部)の空撮写
真が使われている。現在は
BBC Oneにて1話30分の新作が週4回放送されて
おり、人気は
ITVで40年以上放送されているコロネーション・ストリート
と二分している。デジタル放送の
BBC Threeで再放送が行われている。
イーストエンダーズ - Wikipedia
EastEnders: Sean dumps Ruby part 1 - EastEnders - BBC
タブロイド (Tabloid) とは、新聞の用紙サイズで開いた時に
約23.5インチ×14.75インチ(597mm × 375mm、A2判に近似)
となる判形のこと。このサイズは新聞紙の二種類のスタンダ
ードサイズのうち小さい方であり、大きい方はブランケット
判(英:broadsheets)と呼ばれる。
また、元々このサイズを採用していた新聞がセンセーショナル
な事件報道やゴシップ報道などに力を入れる
大衆紙であったこ
とから、「
タブロイド」という語は
大衆紙の報道スタイルを連
想させる。
タブロイド - Wikipedia
王室のタブーを暴露し、
ベッカムを「スーパースター」に仕立て
上げ、時には政権の行方をも左右する英国
大衆紙。ネタを演出し
売上げを伸ばすためなら、潜入取材、隠し撮り、やらせと手段を
問わない。紙面には、大スクープと大
誤報、ゴシップと偏見、政
策
論議とヌード写真までが、ごった煮のごとく詰まっている。読
んでもちっとも賢くならないが面白すぎてやめられない、英国タ
ブロイドの世界へご招待。
読売新聞社 (編集)、「万葉のこころを未来へ」推進委員会 (編集)
キ―と鳴くやもりの声聞いたのは暗き廊下の母の亡きあと
横山明美(55歳)東京都
平成万葉集
☆☆ヨーロッパ古城巡り☆☆ フランス
Josselin (Breton: Josilin)
is a commune in the Morbihan department in Brittany
in north-western France
Josselin - Wikipedia
New Orleans Country Club
5024 Pontchartrain Blvd
New Orleans, LA 70118
(504)482-7594
"New Orleans Country Club" Flyover Tour :
Orchard Hotel Singapore
442 Orchard Road Singapore Singapore
Orchard
Hotel Singapore :
◇気になるサイト◇**
AI / 大切なもの
アンブローズ
ビアス (著)、Ambrose Bierce (原著)、西川 正身 (翻訳)