「密約」調査の発表は来年一月にずれ込む
昨22日、
沖縄返還の交渉過程で、当時の
佐藤栄作首相と
ニクソン米大統領が1969
年11月に署名した、沖縄への有事の際の
核持ち込みを認める密約文書を、佐藤氏
の遺族が保管していたことが明らかにな
りました。
密約の内容はすでに分かっていたものの、
両首脳の署名がある実物の存在が明らか
になったのはこれが初めてです。
このように、「密約」に関する事実関係
が一つひとつ明らかにされていく過程で、
外務省の文書隠滅や虚偽答弁など、これ
までに外務省が国民についてきたウソが
露呈する可能性が高くなってきました。
ここで、
密約問題を整理しておきますと、
岡田克也外相が調査を命じた四種類の密
約があります。
（１）核持ち込みに関する密約、
（２）朝鮮有事に関する密約（
在日米軍
基地から
事前協議なしに米軍が出
撃できると認めたもの）、
（３）有事の際に沖縄への核持ち込みを
認めた密約、
（４）
沖縄返還時の費用四百万ドルなど
を「肩代わり」することを約束し
た密約。
なお、調査の結果発表は、二〇一〇年一
月にずれ込んでいます。
これらの密約を裏付ける確証が、ぞろぞ
ろと出てくるなか、もう一つ、外務省官
僚にとって頭の痛い問題があります。
それは
鈴木宗男衆議院議員が出している
「
質問主意書」です。
鈴木宗男議員は外
務省の不祥事について数多くの質問主意
書を提出していますが、二〇〇六年二月
二十四日提出の主意書をめぐり、次のよ
うなやりとりが残されています。
鈴木宗男氏が、「平成十二（二〇〇〇）
年に
河野洋平外務大臣が吉野文六氏に電
話で『
密約問題』について照会を行った
事実があるか。事実があるとするならば、
その電話による照会は外務省事務当局が
外務大臣に依頼して行ったものか」と質
問したのに対し、内閣は次のように答弁
しました。
「外務省としては、ご指摘の元
アメリカ
局長の発言の内容については承知してい
ないが、平成十四（二〇〇二）年七月四
日の
参議院外交防衛委員会において川口
順子
外務大臣が答弁しているとおり、河
野洋平大臣が元
アメリカ局長に密約は存
在しないことを確認したと承知しており、
河野洋平外務大臣がご指摘のような要請
を行ったとは承知していない」
しかし、
岡田克也外相の命令による調査
によって、密約の存在が確認されますと、
この答弁は虚偽だったことが明らかにな
ってしまいます。
その場限りの答弁はやがてばれる
この答弁が虚偽だったことが明らかにな
ると、平成十四年七月の川口順子氏の答
弁もまた嘘だということになります。
すなわち、「この件（『肩代わり』密約）
については一昨年も報道がございました。
そしてその際、当時の
河野洋平外務大臣
が、元
アメリ局長でこの問題にかかわっ
た吉野文六氏に、直接話をされて、密約
は存在しないということを確認済みでご
ざいます」と川口順子氏。
これらの答弁は、この数年以内になされ
たもので、現在の外務省幹部たちが直接
関与している可能性が高いのです。
それでも、外務官僚たちが、当時の外務
大臣に言われて仕方なく虚偽の答弁を行
ったと、強弁するのであれば、今度は、
川口順子氏に尋ねる必要が出てきます。
「
外務大臣であったあなたは、密約の存
在を知っていながら、自らのイニシアテ
ィブで外務官僚に虚偽の答弁を指示した
のか、あるいは、官僚から、このように
なっている、と言われて、その通り答え
たのか」と。
明らかに、「密約」が結ばれた当初は、
政治家（総理、外相）の主導によるもの
であり、官僚たちはその指示にしたがっ
て、「密約」の否定を行ってきました。
しかし、時代が下って、「密約」の存在
は先ず歴代外務
事務次官の間で引き継が
れ、次官から
外務大臣に伝えられていま
した。
そのイニシアティブは外務官僚側に移っ
ています。つまり
密約問題は途中から官
僚主導に切り換わっていました。
国民としては、
岡田克也外相の命令によ
る調査によって、密約の真相が解明され
ることを期待します。（了）
(N135-9)
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