「美の巨人たち」

テレビ東京系列で、土曜日22:00〜22:30放送の

放送開始10年目を迎えた「美の巨人たち」は、

いまでは、私の楽しみの一つとなっている。

芸術は、己の感性で鑑賞するものであって他人の
解説などに頼ってはいけないと、立派な意見を述
べる友人がいるが、私には、それほどの鑑賞眼が
備わっていないから、大いに頼っている。

美術に関していえば、「美の巨人たち」とNHK
日曜美術館」とが、美術番組の双璧と思ってい
る。いつも、鑑賞力の涵養に役立っていると実感
している。

オープニング曲のジョエル・タン「Beauty of
the Earth」(作曲:陳光榮)を聴くと、もう
ゾクゾクする。

小林薫のナーレーションが、これまた秀逸である。 
あの艶っぽい声は、どこから生まれてくるのか。
番組の半分の魅力は小林薫に負っているといって
もいい。

その魅力は唐十郎が主宰する状況劇場に在籍中に
培われたものか。第23回日本アカデミー賞・主演
男優賞を受賞していますしね。穏やかな中にも力
強さのあるナレーションは、数奇な芸術家の生き
ざまを、よりドラマチックに演出している。

『最初は、感情を込め過ぎてはいけないと思い、
なるべく無機質に語るように心掛けていました。
でも今は自然体でやっています。』とのこと。

印象深い作品の一つに、ノーマン・ロックウェル
『新しいご近所さん』がある。

ノーマン・ロックウェルアメリカを見つめ、
アメリカを描き続けた。彼の絵に登場する人物
は、ごく平凡に日常生活を営む人々。ロックウ
ェルはそのありふれた生活の中のワンシーンを
切り取っていく。誰もが共感する場面を。
この絵も、ある日常のワンシーン。のどかな春
の日に新しいご近所さんが引っ越してきた時の
様子。新たな土地で緊張と不安でとまどってい
るのは、ピンクのワンピースを着て真っ白な猫
を抱えた女の子と、後ろ手にグローブを持った
少年。彼らを見ている子供たちは興味津々。穏
やかな情景が描かれた絵だが、実はそれまでの
ロックウェルの作品とは大きく違う点がある。
それは描かれている人物の肌の色。

ノーマン・ロックウェルは、この絵で、黒人を
描くことが禁止されていたポスト誌をやめ、自
由に社会問題が描けるルック誌へと移った経緯
がある、という。

こんな背景、いくら、絵とにらっめこしても、
教えてもらわないと、分からりませんよね。

おい、わが親愛なる友よ、なんと答えるか。


ちなみに、『新しいご近所さん』の絵は「美の
巨人たち」のホームページのバックナンバーの
の項からもで見ることができます。(N8)